2018 Fiscal Year Research-status Report
主嗅覚系を介した匂い情報による性行動価値判断メカニズムの解明
Project/Area Number |
18K14847
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井ノ口 霞 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (90632349)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 嗅覚 / 情動 / 価値判断 / 神経回路 / 軸索投射 / シナプス / 脳 / 神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
快・不快の情動は行動の動機付けに重要な役割を果たしている。嗅覚情報は他の感覚系と異なり視床を介さずに情動を司る扁桃体に伝達されていることから、嗅覚は情動の誘起と密接に関わると考えられている。マウス嗅覚系は主に一般的な匂い物質を認識している主嗅覚系とフェロモンを認識している鋤鼻器系の二つのシステムに大別される。これまで、性行動は不揮発性フェロモンを受容する器官である鋤鼻器を介して誘導されると考えられていた。しかし近年、異性の尿に含まれる揮発性物質のみでも主嗅覚系を介して性行動が誘起されることが明らかになってきた。私たちはこれまでに性行動を引き起こす揮発性物質の情報が主嗅覚系の腹側領域から扁桃体内側核に伝達されていることを明らかにした。ヒトを含めた高等霊長類の鋤鼻器は退化し、機能していないことから主嗅覚系の一部が鋤鼻器の機能を担っていると考えられる。 本研究では主嗅覚系扁桃体内側核の経路が行動の価値判断にどのように影響しているのか、その分子メカニズムと情報動態を明らかにすることを目標とした。本年度は嗅球腹側にあり扁桃体内側核特異的に軸索を伸ばしている僧帽細胞を薬理遺伝学的手法を用いて解析した。その結果、これらの神経細胞を抑制すると異性の匂いに対する嗜好性に影響が見られることが明らかになった。さらに、この領域の神経細胞サブタイプを同定する為に必要な遺伝子プローブおよび匂い提示特異的に活性化する神経細胞特異的にその下流回路を標識するアデノ随伴ウイルスの作成が完了した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主嗅覚系回路を薬理遺伝学的に機能操作し、行動レベルにおける影響を捉えることができた。また次年度の実験を遂行する為の系を確立することができた為。
|
Strategy for Future Research Activity |
扁桃体内側核れまでに蛍光色素を用いたトレース実験で解析されており、側坐核、ブローカ対角帯、視床下部などに投射していることが報告されている。しかしながら、細胞種や入力の違投射を見ることはできなかった。神経活動依存的に組み換え活性が生じる遺伝子組み換えマウスとアデノ随伴ウイルスを組み合わせることで、異性または同性の匂い特異的に活性化した細胞の投射領域を可視化し、異なる行動を引き起こす二つの匂い情報が脳のどの領域に伝達されているかを明らかにする。 また、それぞれの匂い特異的に活性化される神経細胞サブタイプを同定する。
|