2018 Fiscal Year Research-status Report
二次進行型多発性硬化症におけるミクログリアの細胞浸潤制御機構の解明
Project/Area Number |
18K14851
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
田辺 章悟 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 神経薬理研究部, 室長 (40772166)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ミクログリア / 多発性硬化症 |
Outline of Annual Research Achievements |
多発性硬化症は四肢の麻痺や視覚障害などの神経症状を呈する自己免疫性の神経難病である。再発と寛解を繰り返す特徴をもつが、約半数の多発性硬化症患者は、発症から10年以内に進行性の経過を辿る二次進行性多発性硬化症に移行する。二次進行型多発性硬化症に対する有効な治療薬は開発されていない。 我々は多発性硬化症の二次進行期におけるミクログリアの機能解明を目的に研究を行った。中枢神経系の免疫系細胞であるミクログリアが免疫系細胞の中枢神経系への浸潤を抑制することを見出した。二次進行性多発性硬化症のモデルマウスにミクログリアを除去する薬理学処理を行うと、症状が劇症化する。更に、ミクログリアを除去すると脊髄で顕著な免疫系細胞の浸潤増加が観察されることから、ミクログリアは免疫系細胞の浸潤を抑制する働きがあることが示唆される。さらなる解析の結果、二次進行性多発性硬化症のモデルマウスにミクログリアを除去する薬理学処理を行うと、免疫系細胞の中でもCD4+ T細胞が特に増加すること、血液脳関門の透過性には影響が見られないことが明らかになった。また、脊髄では増殖性のCD4+T細胞の増加や制御性T細胞の減少が確認された。以上の結果から、ミクログリアは浸潤したT細胞の増殖を促進すること、制御性T細胞への分化を抑制させることで多発性硬化症の二次進行を抑制することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミクログリアが二次進行型多発性硬化症の病態を抑制させるメカニズムを解明するという当初の目的はおおむね達成した。また、ミクログリアが細胞浸潤やT細胞の増殖性のみでなく、制御性T細胞の分化制御に寄与していることを見出せたことから想定以上の発見があったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ミクログリアがT細胞の機能を修飾するという知見は数多く存在するが、ミクログリアの機能は病態の種類によって大きく異なる。二次進行型多発性硬化症のミクログリアに関する知見は乏しく、遺伝子の発現パターンも不明である。今後は、細胞分離実験や遺伝子発現解析からミクログリアがT細胞の増殖を抑制させる分子メカニズムを解明する。
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