2019 Fiscal Year Research-status Report
痛覚と逃避行動を結びつける上位中枢神経系の役割の解明
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18K14854
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
尾崎 弘展 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (30747697)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 痛覚 / 運動 / 大脳皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度より作成をしていた、痛覚刺激に誘発される逃避行動を定量的に観察するシステムの稼働に成功した。従来行われてきたような人による主観的な判断を用いず、カメラ画像に基づいた客観的かつ定量的な方法を用いたシステムとなっている。 「痛み」の程度を客観的な指標を用いて計測することは、非常に困難であり、特に動物実験においては多くの場合は、人による主観的な評価に頼らざるを得ないことが多い。このことは痛みをコントロールする方法を開発する際に、大きな障壁となっている。そこで本研究では、大脳皮質一次体性感覚野における痛覚受容のメカニズムを調べるにあたって、痛覚が誘発する逃避行動に着目し、逃避行動を定量評価することで痛みの程度を調べた。 また、このシステムには、光遺伝学的手法による神経活動制御機構も含まれており、痛覚経路選択的にチャネルロドプシン(ChR2)を発現させた動物や、抑制性細胞選択的にChR2を発現させた動物を用いて、特定の脳領域が痛覚受容にどのように関わっているのかを調べることができる。これらを用いて、大脳皮質一次体性感覚野Dysgranular領域の活動が痛覚受容に基づく逃避行動の発現に重要な働きをしているのかを確かめた。 まず、痛み刺激として用いたレーザーが痛みとして表現される閾値を逃避行動、その他の指標により求め、抑制性細胞選択的にChR2を発現した動物を用いて、Dysgranular領域の抑制により逃避行動が抑制されることを確かめた。さらにDysgranular領域へと投射する神経線維選択的にChR2を発現させた動物を用いて同様の実験を行ったところ、反対に逃避行動が誘発されることも見出した。これらの結果は、痛覚に基づいた逃避行動の誘発をDysgranular領域が制御していることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
逃避行動計測システムが完成した。さらにDysgranular領域の活動と逃避行動の関連も光遺伝学的手法を組み合わせることで明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は麻酔下での痛覚刺激に対するDysgranular領域の神経活動、および行動実験下でのDysgranular領域が逃避行動に及ぼす影響を明らかにできた。今後は行動実験下でのDysgranular領域の神経活動を計測することで、痛覚受容の際のDysgranular領域の神経活動の詳細な機能的役割を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
大学の校舎移転と新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、実験を中断せざるを得ない状況が生じた。次年度、必要物品等の購入を行い、研究を進める。
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