2018 Fiscal Year Research-status Report
複雑分子の効率的供給を目指した新規酸化的脱炭酸法の開発
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18K14865
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
南條 毅 京都大学, 薬学研究科, 特定助教 (30817268)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ペプチド / 脱炭酸 / アミド / エステル / 超原子価ヨウ素 / ヒドロペルオキシド / 有機触媒 / 糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はα-ケト酸を用いた脱炭酸型縮合反応について特に精力的に検討を進めた。これまでにアルコールやアミンといった単純な求核剤を用いるカルボン酸誘導体の合成はほとんど報告されていなかったが、本年度の検討により、α-ケト酸に適切な超原子価ヨウ素試薬を作用させることでエステル化やアミド化がそれぞれ良好に進行することを見出した。本反応条件では、アミノ酸やペプチドのカップリングで頻繁に問題となるラセミ化やエピメリ化が非常に起こりにくいことが示唆されており、既存の脱水縮合法と比べた場合の優位点となり得る。さらに、上記検討の過程で酸化剤を超原子価ヨウ素試薬から安価な過酸化物に変更することで、より幅広い基質適用範囲を有するアミド化反応の実現も達成した。上記二つの手法に共通する興味深い特徴として、無保護のカルボキシ基等を分子内に存在していても、α-ケトカルボキシ基特異的に反応が進行することが挙げられ、複雑分子に対する化学選択的な修飾への応用も期待される。また、これらの検討において原料となるキラルβ-アミノ-α-ケト酸の効率的調製法の開発は実用面での大きな課題であったが、筆者は新規多機能性有機触媒を用いた不斉Mannich反応により、効率的にキラルβ-アミノ-α-ケト酸の等価体を合成できることを見出した。加えて、脱炭酸型グリコシル化反応についても検討を行った結果、当初の反応設計とは若干異なるものの、目的とするグリコシドを得ることに成功しており、現在さらなる反応条件最適化を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
α-ケト酸を用いた脱炭酸型縮合反応については超原子価ヨウ素試薬を用いることで実現できた。さらに当初の予定になかった過酸化物を用いる異なった反応条件も見出した上、検討の過程で新たに課題となったキラルβ-アミノ-α-ケト酸の新規合成法の開発も概ね達成できた。これらの成果は当初の計画以上のものであると考えている。一方で、脱炭酸型グリコシル化反応については目的とするグリコシドを与える反応設計は確立したものの、依然反応条件最適化検討の途中である。以上の結果を総合すると概ね順調に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
見出した脱炭酸型アミド化反応を多官能基性複雑分子に適用し、有用性を確認するとともに、フロー反応への展開等を検討し、実用性のさらなる改善を目指す予定である。また本年度最適化したキラルβ-アミノ-α-ケト酸の新規合成法を利用して、非タンパク質性アミノ酸の脱炭酸型縮合に利用できるα-ケト酸を種々調製し、特殊ペプチドを含む有用分子の全合成も達成したい。また、脱炭酸型グリコシル化についても良好な収率で目的とするグリコシドを与える条件を見出し、複雑分子への化学選択的糖鎖導入等に応用していく予定である。
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Causes of Carryover |
当初の支出予定額と大きな差異が生じた項目は物品費のみであり、これは脱炭酸型グリコシル化の検討に必要な試薬で未購入のものが多くあったためである。これらの試薬は今後検討が進めば必ず必要となるものであり、次年度での購入費用に充てる予定である。
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