2018 Fiscal Year Research-status Report
がん微小環境応答型分子エピジチオジケトピペラジン類の創製
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18K14867
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
君嶋 敦 大阪大学, 薬学研究科, 特任助教 (20812134)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 全合成 / 天然物 / 増殖阻害活性 / がん微小環境 / 一重項酸素 / 脱芳香環化 / 真菌 / DC1149B |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、海洋由来真菌Trichoderma sp.の培養抽出物から単離同定したDC1149Bが、低グルコース環境応答型の特異な細胞増殖阻害活性を有することを独自の知見として得ている。そこで、新規医薬品シードの創出という観点から、DC1149Bの構造活性相関および作用機序の解明を指向した本化合物群の効率かつ網羅的合成の検討を行うこととした。 2018年度は、まずDC1149Bおよびその類縁化合物群の重要骨格であるcis-1,2-オキサアザデカリン部位を光学活性体として迅速的に構築する検討を行なった。その結果、チロシンメチルエステルの窒素原子の酸化等を経て合成した誘導体の、フェノール部位の脱芳香環化と分子内oxy-Michael付加を鍵反応として8工程で目的とする骨格を光学活性体として構築することに成功した。また、より効率的な合成法の確立を目指し、フェノール部位の脱芳香環化に一重項酸素を用いることで、脱芳香環化と分子内oxy-Michael付加反応が一挙に進行し、同様の出発原料から5工程で所望の骨格を合成し短工程化を実現した。 次に、確立した本合成法を基盤としてDC1149Bの類縁化合物トリコデルマアミド類の合成へ展開した。その結果、チロシン-t-ブチルエステルを出発物質として12工程を経て光学活性な四環性アミドの合成に成功した。なお、本化合物はトリコデルマアミド BおよびCのラセミ合成の中間体(J. Am. Chem. Soc., 2015, 137. 8050)として文献既知であるため、形式的なトリコデルマアミド類の不斉合成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、ラセミ体としてcis-1,2-オキサアザデカリン骨格を効率的に得る手法は存在していたが、光学活性体として対応する骨格を構築するには17工程(J. Am. Chem. Soc., 2008, 130. 17237)ほど要していた。今回確立したチロシンをキラルプールとする脱芳香環化と分子内oxy-Michael付加反応を経る手法により、エノンを有する所望の骨格を8工程で合成することに成功した。また、より官能基選択的な一重項酸素を酸化剤として用いることで、目的とする骨格の5工程合成を達成し、さらなる短工程化を実現した点は注目に値する。さらに、今回確立した手法で光学活性なcis-1,2-オキサアザデカリン骨格を構築した後、種々の官能基変換およびアミノクマリンユニットとのカップリング等を経て、トリコデルマアミド類の既存のラセミ全合成中間体を光学活性体として調製した点も成果として挙げられる。以上より、本研究の進捗状況は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、調製した光学活性な四環性アミドからトリコデルマアミド類への変換を行いその不斉合成を達成する。一方で、同四環性アミドもしくはその前駆体から、設定したジケトピペラジン合成中間体を経るDC1149B の合成を試みる。このDC1149B への変換で課題となるのが、cis-1,2-オキサアザデカリン骨格の酸化度の調節とジスルフィド架橋の構築である。前者に関しては、合成した四環性アミドのジエン部位と一重項酸素とのDiels-Alder反応により効果的に酸素官能基が導入できると考えている。後者に関しては、まず適切な位置に二つ硫黄原子を導入し、最後に酸化的に架橋するという信頼性の高い方法で検討を行う。なお、本合成ルートは設定した合成中間体から信頼性の高い反応で各種類縁体への変換が可能となる設計であるため、合成の多様性が期待できる。
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