2018 Fiscal Year Research-status Report
酸無水物の脱ガス反応による高難度炭素-炭素連結反応の開発
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18K14868
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
八幡 健三 大阪大学, 薬学研究科, 助教 (30808100)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 4級炭素 / ビアリール |
Outline of Annual Research Achievements |
α、α-二置換マロン酸モノエステルから合成した酸無水物に対してパラジウム触媒と種々のリガンドを作用させることで脱炭酸反応が進行し、4級炭素を有するβケトエステルを温和な条件下に構築することに成功した。さらに、不斉リガンドを用いることでわずかながら不斉誘起を達成することができた。4級炭素は立体障害のために構築法が限られており、4級炭素を有するβケトエステルを合成するには一般的に強塩基性条件が必要とされるが、今回見出した手法は中性条件下に反応が進行するため多様なβケトエステルの合成への応用が期待できる。βケトエステルは様々な天然物中に見られる骨格であるとともに、更なる分子変換の足掛かりとなるケトン、エステルなどの官能基を有しているためビルディングブロックとしても非常に有用な分子である。 安息香酸由来の酸無水物に対してコバルト触媒を作用させることで脱炭酸反応および脱カルボニル化反応が進行し、低収率ながらビアリールが得られることを見出した。ビアリール類は機能性材料や、不斉リガンドなどに利用可能な有用な分子群であるが、これまでの合成法は分子間カップリング反応によるものがほとんどであり、立体障害の大きなビアリール合成は困難であった。今回見出した手法は分子内で反応が進行するため立体障害の影響を受けにくいと予想させるため、これまで合成が不可能であった大きな置換基を有するビアリール類の合成への応用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に挙げた「立体障害の解消」「2連続4級不斉中心の構築」「歪み分子の合成」のうち、「立体障害の解消」に関して4級炭素の構築やビアリール類の合成に成功しており、おおむね研究計画通りに成果がでている。さらに4級炭素の構築では不斉反応への展開についても期待できる結果が得られており、「2連続4級不斉中心の構築」につながる予備的な知見も得られている。「歪み分子の合成」に関してはまだ取り掛かっていないが、上記の研究から得られた知見の集積が本課題の遂行にも役立つはずである。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に見出した4級炭素を有するβケトエステルの合成法を様々な基質に適用し、反応の一般性を明らかにする。また、ビアリール類の合成法の反応条件を最適化し、立体障害の大きなビアリール類の合成を目指す。さらに、これら二つの反応に関して、不斉リガンドのスクリーニングを行うことで不斉反応へと展開し、不斉4級炭素や不斉ビアリール合成法を確立する。上記検討によって得られた知見を基に、有機合成化学における重要課題である2連続4級不斉中心の構築法の開発を目指す。 現段階では、脱炭酸反応と脱カルボニル化反応が進行する系と進行しない系が混在しており、これらを制御している要因が不確定である。これを明らかにするためにより広範な金属触媒とリガンドを体系的にスクリーニングする。 上記の研究結果を基に歪みを有する分子の構築を目指す。 本研究には研究協力者として、申請者の研究室の学生である金子祐樹、桜井秋、堀修平が実験を担当する。
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Causes of Carryover |
購入予定であった試薬が在庫切れによる製造中のため購入できなかった。次年度に当該試薬の購入に使用する。
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