2019 Fiscal Year Research-status Report
アミロイドβタンパク質産生を特異的に抑制する新たな機序の解析
Project/Area Number |
18K14883
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
千住 絵美 (日比野絵美) 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 特任助教 (00803371)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / ILEI / FAM3C / NMR / γセクレターゼ / Alaスキャニング / 構造―機能連関 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病はアミロイドβタンパク質 (Aβ) の脳内蓄積が原因とされている。分泌タンパク質ILEIはγセクレターゼの構成分子の一つであるプレセニリン-1へ結合することでAβおよびAβの前駆体であるAPP-CTFの産生を抑制することが報告されている。加えて、ILEIはγセクレターゼに結合するものの、γセクレターゼの活性自体には影響を与えないことから、新規のメカニズムによる機能であることもわかっているが、詳細なメカニズムは未解明のままである。本研究の目的は、ILEIのAβ産生抑制機能に関わる構造―機能連関を明らかにし、アルツハイマー病治療薬の開発へつなげることである。 Aβ40の産生量に関与するILEIの領域を特定するために、まずILEIの構造に影響を与える残基と、それ以外の残基を、保存性と細胞内でのAla置換体の強制発現の系から明らかにした。つづいて構造に影響を与えない残基のうちのいくつかについてのAla置換体を用いてAPP-CTFの産生抑制機能の低下を調べることで、APP-CTFの産生抑制機能を喪失した、変異体を得ることができた。さらにAla以外のアミノ酸への置換によって、さらに機能に影響する残基の特徴を明らかにすることができた。 また、ILEIを大腸菌発現系で作製・精製したタンパク質を用いることで、さらにILEIとγセクレターゼ複合体との結合について詳細な解析を行うための、サンプル調製方法や条件検討を進めた。 今後はさらなる詳細な解析を経て、これらの情報を用いたILEIの活性中心を模倣した薬のデザインをし、アルツハイマー病の治療薬の創薬に結びつける予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Aβの産生抑制機能に関与するILEIの領域を特定するために、Alaスキャニングを行なった。まず、ILEIの機能に重要である残基の候補を絞ることを目的に、構造形成に重要な残基を除外することを考えた。すなわち保存性と細胞内でのAla置換体の強制発現の系から構造に影響を与える変異体を調べ、それらについては機能解析から除外した。つづいて構造に影響を与えない残基のいくつかのAla置換体を用いてAPP-CTFの産生抑制機能の低下を調べた。その結果、APP-CTFの産生抑制機能を喪失した変異体を得ることができた。さらに、ILEI の機能に関与する側鎖の情報を得るためにAla以外のアミノ酸への置換体を用いた解析を行なった。 また、大腸菌発現系で作製・精製したILEIを用い、培養細胞での機能解析と、多次元溶液NMRを用いた構造解析を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
ILEIはそのままの状態では投与が難しいため、ILEIの活性中心の構造を模倣したドラッグデザインを行い、アルツハイマー病治療薬に繋げることを目的に進める。ILEIの活性中心が推測できたため、さらに3D-RISM理論に基づいた計算化学とNMR測定を組み合わせることで、ILEIの活性中心の構造を模倣したペプチドのデザインならびに結合解析ができる系を構築・評価する。 これらのさらなる詳細な解析から得られた情報を用いてILEIの活性中心を模倣した薬のデザインを行い、アルツハイマー病の治療薬の創薬に結びつける予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は約6000円であり、ほぼ計画通り使用している。翌年度では消耗品費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)