Outline of Annual Research Achievements |
活性イオウ分子(RSS)の産生酵素の一つであるCSEの過剰発現(CSE-Tg)マウスは, 各臓器で高いCSE発現を示したにもかかわらず, WTと比べ, 臓器中のRSS量に大きな変化は見られなかった. 一方興味深い事に, 臓器 (細胞) 外である血漿中のRSS量は, WTに比べ顕著に増加していた. 同様に, CSE-Tgマウス初代肝細胞においても, 細胞内RSS量はWTと比べ大差ないものの, 細胞外 (培地中)でのRSS量は顕著に増加していた. これらの結果は, 細胞中で産生された余剰のRSSは, 細胞外へと排出されることを示唆している. さらに, ポリサルファー化合物の投与により増加した細胞内RSS量は, 細胞外へ放出されることで一定期間で定常レベルに戻ること, また, ある一定量以上の投与は, 逆に細胞毒性を引き起こすことを見出した. つまり、生体は余剰なRSSを細胞外へと積極的に排出する輸送システムを介して, 細胞内の恒常性を維持していることを示唆している. 興味深い事に, 培地中 (細胞外) からアミノ酸を除去すると, RSSのひとつであるシステインパースルフィド (CysSSH)の細胞外排出が抑制された. さらに, この排出抑制はシスチン添加により, 通常レベルまで回復した.一連の結果は, 少なくともCysSSHの細胞外排出にはアミノ酸要求性アンチポーターが寄与しており, そのカウンターパートのひとつがシスチンであることを示唆している. 本研究成果は, 還元ストレス/レドックス制御における, アミノ酸トランスポーターを介した活性イオウ分子の細胞外排出機構という新たな仕組みを明らかにしたものであり, 今後還元ストレスに起因する病態の発症メカニズムの解明に繋がるものと期待する.
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