2020 Fiscal Year Research-status Report
細胞外リン脂質代謝酵素による腸内細菌叢整備を介した疾患制御機構の解明
Project/Area Number |
18K14897
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
村瀬 礼美 昭和大学, 薬学部, 助教 (20779764)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 腸内細菌叢 / 高脂肪食負荷肥満モデルマウス / リン脂質代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
リン脂質代謝酵素であるホスホリパーゼA2(PLA2)の腸内細菌叢の制御を介した疾患制御機構の解明について研究を遂行した。リン脂質代謝酵素PLA2のアイソザイムの一種であるX型分泌性ホスホリパーゼA2(sPLA2-X)は全身の組織のなかでほぼ大腸にしか発現が認められないにも関わらず、遠隔組織である脂肪組織での表現型が認められる。 令和2年度については、前年度に行った表現型への腸内細菌の関与に関する実験(Co-housingによる腸内細菌叢の均一化)の再現性の確認を行った。 sPLA2-Xの高脂肪食負荷肥満モデルの表現型に腸内細菌の変化が寄与しているかどうか精査する目的で、野生型およびsPLA2-X欠損マウスがCohousing(ヘテロ交配によって得られた野生型及び欠損マウスを出生時から同一ケージで飼育)された状態で高脂肪食負荷を行い、体重測定、グルコース負荷試験、インスリン抵抗性試験にて表現型の精査を行った。 その結果、Co-housingを行っていない状態では、高脂肪食負荷群で野生型と比べ欠損マウスでは有意な体重増加の亢進、インスリン抵抗性の増悪が認められた。一方、Co-housingを行った状態で高脂肪食を負荷すると、野生型と欠損マウスの間で体重、インスリン抵抗性共に差が認められなくなった。これは、Co-housingによって腸内細菌叢が野生型と欠損マウスで均一になったことに起因すると考えられる。以上のことから、sPLA2-X欠損マウスにおけるメタボリックシンドローム増悪の表現型には、腸内細菌叢の変化が寄与していることが示唆された。 これは前年度に行った実験と同様の結果であり、再現性が得られたと判断した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID-19への対応として、実験動物の削減が求められたことから当初予定していた高脂肪食負荷実験の実施が遅れた。このことから、令和2年度は、前年度に行った表現型解析の再現性の確認をするにとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
sPLA2-X欠損マウスの腸内細菌叢が表現型に与える影響について、マウス糞便サンプルによる腸内細菌叢変化の精査を行い、腸内細菌叢組成のどのような変化が影響するか検証したい。また、腸内細菌叢の変化により大腸の炎症状態に変化が生じる可能性が考えられることから大腸における炎症関連分子の発現解析を行う。また、大腸だけでなく、メタボリックシンドロームの表現型に関する代謝系の分子についても関連分子の発現解析を行う。 さらに、腸内細菌叢の変化に脂肪酸代謝物や水溶性代謝物が関与していることを想定し、腸管におけるメタボローム解析を行う。
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Causes of Carryover |
令和2年度はCOVID-19の影響を受け、令和3年度へ延長申請を行ったことから、研究が継続できるよう、次年度使用額が生じている。令和3年度は引き続き実験用試薬や実験用動物飼育に関する費用、学会発表に関する費用として使用する予定である。
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