2018 Fiscal Year Research-status Report
エポキシ化ω3脂肪酸によるマスト細胞活性化制御機構の全貌解明
Project/Area Number |
18K14898
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
嶋中 雄太 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (60783149)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | マスト細胞 / エポキシ化 / オメガ3脂肪酸 / アナフィラキシー |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、先進国におけるアレルギー患者数は急増しており、大きな社会問題となっている。アレルギー患者では血中IgEの上昇とマスト細胞の過度な活性化が生じており、マスト細胞の活性化制御機構の解明がアレルギー治療のための急務となっている。申請者はこれまでに、マスト細胞がエポキシ化オメガ3脂肪酸というユニークな酸化脂肪酸を豊富に産生していること、このエポキシ化オメガ3脂肪酸がマスト細胞のIgE/抗原依存的な活性化を促進していることを見出した。しかしながら、(I)エポキシ化オメガ3脂肪酸がどの酵素によって酸化されて産生されるか、さらに(II)エポキシ化オメガ3脂肪酸の標的分子は明らかになっていない。本研究課題は、この2点の解明である。2018年度は(I)を中心に研究を行なった。まず培養細胞に各種脂肪酸酸化酵素を過剰発現しオメガ3脂肪酸のエポキシ化酵素のスクリーニングを行なった結果、Cyp4a12aおよびCyp4a12bがEPAおよびDHAなどのオメガ3脂肪酸を効率よくエポキシ化し、さらにマスト細胞に高発現していることが明らかとなった。Cyp4a12aとCyp4a12bは遺伝子上で隣接して存在し、ほぼ同じアミノ酸配列を有している。そこで、CRISPR-Cas9システムを用いCyp4a12aとCyp4a12bの二重欠損マウスを作成した。するとこのマウスではアナフィラキシーが大きく減弱していた。さらにこのマウス由来のマスト細胞のエポキシ化オメガ3脂肪酸産生量は著しく減弱していた。以上からCyp4a12a/bこそがマスト細胞においてオメガ3脂肪酸エポキシ化の責任酵素であることを突き止めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は(I)エポキシ化オメガ3脂肪酸がどの酵素によって酸化されて産生されるか明らかとすること、さらに(II)エポキシ化オメガ3脂肪酸の標的分子を明らかにすることの2点である。申請者は1年目で研究課題の1つであるマスト細胞におけるオメガ3脂肪酸のエポキシ化酵素として、Cyp4a12aおよびCyp4a12bをin vitroおよびin vivoの両方で証明することができた。よって研究は概ね良好と言える。また、(II)の準備段階として培養細胞におけるクリックケミストリーの系の樹立、およびマウスの全核内受容体のクローニングも完了した。よって1年目の目標は達成できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度においては(II)エポキシ化オメガ3脂肪酸の標的分子の同定を、全核内受容体の過剰発現系および、クリックケミストリーを用いた網羅的な探索の両面より進めることにする。これまでにマスト細胞にエポキシ化オメガ3脂肪酸を添加することによりSrcin1という遺伝子の発現が抑制されることを見出している。さらにマスト細胞に核内受容体であるPPARgのアンタゴニストGW9662を添加しても同様な現象が見られることからエポキシ化オメガ3脂肪酸はPPARgのアンタゴにストであると考えていた。しかしルシフェラーゼ を用いたPPARgの活性化レポーターアッセイを用いてもエポキシ化オメガ脂肪酸は全く活性を抑えなかった。即ちマスト細胞においてGW9662がPPARg以外の分子に結合して活性を発揮している可能性が示された。そこで、GW9662のアルキン付加体を合成しマスト細胞においてGW9662の結合分子をクリックケミストリーによりビオチン化し、質量分析計により同定する。現在GW9662のアルキンアナログの合成は完了している。また、エポキシ化オメガ3脂肪酸やGW9662の結合相手がPPARg以外の核内受容体である可能性があるので、マウスの全核内受容体をクローニングし、Srcin1のプロモーター領域に対するレポーターアッセイを行う。これによりエポキシ化オメガ3脂肪酸およびGW9662のマスト細胞における標的分子を同定する。
|
Research Products
(10 results)