2018 Fiscal Year Research-status Report
ABCタンパク質を介したペルオキシソームへの極長鎖脂肪酸CoA輸送機構の解明
Project/Area Number |
18K14900
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
川口 甲介 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (80624866)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ABCタンパク質 / ペルオキシソーム / 極長鎖脂肪酸 / プロテオリポソーム / メタノール資化性酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
ペルオキシソーム膜上に局在するABCタンパク質ABCD1によるペルオキシソーム内への極長鎖脂肪酸CoAの輸送機構について解析を行い、以下に示す結果を得た。 1.ABCD1のacyl-CoA thioesterase(ACOT)活性はシステインに作用するチオール阻害剤 4-クロロメルクリ安息香酸により阻害され、ABCD1と基質との中間体形成(アシル化)も阻害された。また、ABCD1と基質の結合はヒドロキシルアミンによって加水分解を受け、この結合がシステインのチオール基を解したチオエステル結合であることを明らかにした。ABCD1の膜貫通領域のみを持つ変異型ABCD1も、野生型と同等のACOT 活性を持つことを明らかにした。以上から、ABCD1のACOT活性の活性中心が膜貫通領域に存在するシステイン残基であることが強く示唆された。 2.ABCD1は、CoAの3’リン酸基を脱リン酸化したNBD-palmitoyl-dephosphoCoAに対してはACOT 活性を持たなかった。ABCD1による脂肪酸CoAの加水分解には、CoAの3’リン酸基を認識することが重要であるという特性が明らかになった。 3.ABCD1を含むリポソームを用いた基質輸送実験の条件について検討した。リポソーム内部にタンパク質を含まない条件では、ABCD1による加水分解で生じた遊離脂肪酸の輸送はほとんど見られなかった。一方で、酵母のアシルCoA合成酵素FAA2や、脂肪酸と非特異的に結合するBSAをリポソーム内部に封入すると、遊離脂肪酸のリポソーム内部への輸送が見られた。このことから、ABCD1による遊離脂肪酸の輸送には、ペルオキシソーム内に遊離脂肪酸のレセプターとなるタンパク質が存在することが重要であることが示唆された。また、基質輸送実験の系を構築できたことで、ABCD1の基質輸送機構の解析が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.ABCD1のACOT活性の特性について解析が進んだ。その結果、ACOT活性の活性中心のアミノ酸残基が、膜貫通領域に存在するシステイン残基であることが強く示唆された。また、基質のCoA部に存在する3’リン酸基を認識することがACOT活性に重要であることが明らかになった。 2.ABCD1を含むリポソームを用いた基質輸送実験の系を構築することができた。加えて、ABCD1のACOT活性の阻害剤や、ABCD1による加水分解を受けない基質についても明らかにした。これらを基質輸送実験に用いることで、ABCD1の詳細な基質輸送機構について解析することが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の進展状況を踏まえ、以下の2項目を中心に解析を行う。 1.ABCD1のACOT活性の活性中心の同定 ABCD1の膜貫通領域に存在する3つのシステイン残基を1ヶ所、2ヶ所および3ヶ所をアラニンに置換した変異型ABCD1を計7種類作製し、野生型と同様に解析してACOT活性の活性中心を同定する。また、ABCD1遺伝子を欠損したヒト線維芽細胞に野生型および新たに同定したACOT活性を失くした変異型ABCD1を導入してβ酸化活性を測定し、ヒト細胞におけるABCD1のACOT活性が重要であることを実証する。 2.ABCD1の極長鎖脂肪酸CoA輸送機構の解析 蛍光基NBDで標識したNBD-palmitoyl-CoAを基質に用い基質輸送の解析を行う。新たに同定したアシルCoAチオエステラーゼ失活型およびATPase活性を持たない513 番目のリジンをアラニンに置換した変異型と野生型での結果を比較し、基質輸送においてACOT活性とATPase活性がどのように基質輸送を制御しているか明らかにする。さらに、加水分解を受けないNBD-palmitoyl-dephosphoCoAと非標識のpalmitoyl-CoAを基質に用いた輸送解析を行い、ABCD1のアシル化が基質輸送を制御する可能性について検討を行う。
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Causes of Carryover |
高額な実験試薬の購入が、想定よりも少なく済んだために次年度使用額が生じた。 使用計画としては、試薬の購入と、現在準備中の英語論文の英文校正費および投稿料に支出する。また,国内外の学会参加費も支出予定である。
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