2018 Fiscal Year Research-status Report
耐性菌パンデミックの回避に向けた細菌薬剤排出ポンプの解析と阻害剤開発
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18K14902
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山崎 聖司 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (70757301)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 耐性菌 / 感染症 / 排出ポンプ / 細菌 / 抗生物質 / 抗菌薬 / 薬剤耐性 / 多剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界中の医療従事者が直面している薬剤耐性菌感染症の克服、および大規模な耐性菌パンデミックの回避に向け、耐性化に大きく寄与している細菌の薬剤排出ポンプとその発現制御因子に着目した分子標的創薬を実現する。具体的には、実際に申請者の研究から、排出ポンプが薬剤耐性だけでなく病原性発現等にも関わることが分かってきており、排出ポンプの機能の全貌を解明することが重要な課題となってきたため、関与する環境因子を含めた排出ポンプの発現制御ネットワークおよび生理的役割を明らかにする。一方、こちらも申請者の研究から、排出ポンプの薬剤認識機構(Nature, 2011)および阻害剤感受性決定因子(Nature, 2013)が明らかとなったが、依然として臨床的に有効な阻害剤は得られていないため、これまでに得られたタンパク質構造情報を利用した効率的な探索手法によって、排出ポンプ新規阻害剤を開発する。
今年度は、これまでで最もかさ高い化合物であるlauryl maltose neopentyl glycol (LMNG, MW 1,005)の排出ポンプ内部の結合位置を明らかにすることができた。詳細な変異体解析の結果、排出ポンプは化合物の単純な分子量・かさ高さによって認識する結合ポケットを決めているのではなく、化合物個々の特性や構造によって2つの結合ポケットを使い分けていることが示された。
排出ポンプ内部、特に基質結合部位の詳細が明らかになることで、効果的な排出ポンプ新規阻害剤の開発につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今後の研究開発において強力なツールとなる、排出ポンプ内部、特に基質結合部位の詳細情報を獲得できたことに加え、実用化に大きく貢献することができる、排出ポンプの阻害機構についても新たな知見が得られたため。(Scientific Reports 9, 4359, 2019)
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Strategy for Future Research Activity |
今回得られた基質結合部位の詳細情報を用いることで、効果的な排出ポンプ新規阻害剤の開発等、研究全体のスピードアップを図る。また、細菌病原性発現に関与する薬剤排出ポンプ阻害剤候補の詳しい効能評価を引き続き行い、実用化に向けたデータ取得を進める。
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Causes of Carryover |
研究補助員の選定に時間がかかったため。翌年度、雇用日数を増やして対応する。
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