2018 Fiscal Year Research-status Report
プリン作動性化学伝達の遮断による慢性疼痛の抑制メカニズムの解明と薬学的応用
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18K14903
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
加藤 百合 岡山大学, 自然生命科学研究支援センター, 特別契約職員(助教) (10732042)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ATP / 慢性疼痛 / プリン作動性化学伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性疼痛は、神経障害性疼痛、炎症性疼痛、心因性疼痛の3つに大きく分類される。このうち、神経障害性疼痛は癌、糖尿病などによる神経障害、炎症性疼痛は癌、リウマチなどによる末梢の炎症が原因となる耐え難い慢性疼痛である。このように慢性疼痛にはそれぞれ原因に応じた治療が必要であるが、その発症メカニズムの詳細が不明なため、副作用の少ない、効果的な鎮痛薬がこれまで存在しなかった。 慢性疼痛の発症にはプリン作動性化学伝達が関与することが知られている。プリン作動性化学伝達では、小胞型ヌクレオチドトランスポーター(VNUT)によりATPが分泌小胞内に蓄積され、開口放出される。開口放出されたATPがポストシナプス側のプリン受容体に結合することでシグナルが下流に伝達される。本研究ではVNUTに着目し、VNUT特異的阻害剤を同定し、VNUTを阻害することによる鎮痛効果の適応範囲を明らかにする。さらには、その発症メカニズムを明らかにすることを目的としている。昨年度は、新たに慢性疼痛モデルマウスの系を確立し、VNUT阻害剤にて鎮痛効果を検証し、有効であることを明らかにした。疼痛刺激後の野生型、VNUTノックアウトマウスの組織を用いて2D-DIGEを行い、発現に変動が見られたタンパク質を見出した。また、大腸菌にて大量発現させ、精製したVNUTを用いて阻害剤を新たに同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
VNUT阻害剤が新たに確立した慢性疼痛モデルマウスについて鎮痛効果を示し、VNUT阻害剤の疼痛への適応範囲が明らかになった。さらに、このモデルでの疼痛刺激後の野生型、VNUTノックアウトマウス間で発現変動が見られたタンパク質を見出したことから、本研究課題の目的である発症メカニズムの解明へ向けておおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
慢性疼痛の発症メカニズムを明らかにするために、2D-DIGEにより発現に変動が見られたタンパク質の解析を質量分析装置を用いて進める。また、同時に、新たに同定したVNUT阻害剤のタンパク質レベルでのVNUT阻害様式や細胞レベルにおけるATP放出抑制効果などを検証していく予定である。
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