2020 Fiscal Year Research-status Report
薬剤耐性インフルエンザウイルスの蛍光可視化による簡便・迅速な検査法の開発
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18K14905
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
紅林 佑希 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (90751983)
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Project Period (FY) |
2020-03-01 – 2022-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / 薬剤耐性 / シアリダーゼ / 蛍光プローブ / BTP3-Neu5Ac |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では蛍光イメージングを利用した薬剤耐性インフルエンザウイルスの迅速かつ高感度な検出法の確立を目指している。研究代表者らはこれまでにシアリダーゼ蛍光イメージングプローブBTP3-Neu5Acを開発し、インフルエンザウイルスの蛍光イメージング技術、薬剤耐性ウイルスの選択的蛍光イメージング法を開発してきた。本研究では薬剤耐性ウイルスの臨床診断や衛生検査で利用可能な迅速かつ高感度な検出法の確立を目指している。これまでに、蛍光プローブによるウイルス検出の反応条件の最適化を行い、さらにスピンカラムを利用したウイルス簡易濃縮法を開発し、ウイルス検出反応の感度向上を達成した。検出感度は市販のインフルエンザ検出キットと同等の感度を達成した。開発した高感度検出条件によって臨床ウイルス株を用いて薬剤耐性ウイルスの検出・判定が可能であることを確認した。さらに蛍光プローブの改良体開発も行い、蛍光イメージングの精度と感度を向上させた改良型プローブの作製に成功した。BTP3-Neu5Acは蛍光イメージングの際に、蛍光体が反応後にやや拡散していくことが分かっていたが、改良型プローブでは蛍光顕微鏡による観察においてもほぼ拡散が起こらなくなるレベルで蛍光体の拡散を抑えることに成功し、極めて高精度な蛍光イメージングが可能となった。蛍光体の構造を改良したことで蛍光体の蛍光強度の増大を達成することができ、蛍光プローブの高感度化に成功した。H1N1型オセルタミビル耐性以外の薬剤耐性ウイルスの検体は入手や取り扱いが難しいため、現在薬剤耐性の陽性モデルとして薬剤耐性NA発現細胞の作製を行っており、これまでにN1型において薬剤耐性NA発現細胞の作製に成功し、現在はN1型と同様に臨床で見られるN2型NAおよびB型ウイルスのNAについて薬剤耐性変異の導入と発現細胞作製を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに蛍光イメージング技術の基本となるウイルスと蛍光プローブの反応条件の最適化および蛍光プローブ自体の改良を達成した。これにより反応条件および基質の性質の両面から高感度化に成功した。両研究ともに感度向上が達成できたことで当初の予想以上に高感度化に成功し、さらに両成果は組み合わせることが可能であるため、改良プローブで最適な条件で反応を行うことでさらなる高感度化も見込まれ、現在試行中である。現在は、臨床や衛生検査での実応用を仮定して、陽性モデルとなる薬剤耐性変異を組み込んだNAの作製と様々なウイルス株や濃度、検体の状態などを検討している。基礎技術については一定の成果が出ており、迅速検出法としての条件検討を詰めている段階であるため概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に蛍光イメージング技術の基礎技術を大きく発展させ、基盤として確立することが出来た。今後は臨床や衛生検査での実応用をめざし、ウイルス検体の種類や状態、濃度の違いが蛍光イメージングにどのような影響を及ぼすかを検証し、蛍光イメージングによる薬剤耐性ウイルスの検出法確立を目指していく。薬剤耐性の判定を行う際には偽陰性や偽陽性の問題が懸念される。薬剤耐性の陽性検体があれば判定の精確性は大きく向上すると考えられ、現在陽性検体モデルとして薬剤耐性NA発現細胞を作製中である。 また、実応用をめざし、衛生検査機関との共同研究を実施中であり、実際の衛生検査機関での検体において本技術が利用可能であることが確認できている。今後、衛生検査機関等での利用をめざした大量検体での薬剤耐性判定の実施における問題点を洗い出し、サーベイランスのためのスクリーニング系として技術を確立させていく。 さらに、より迅速で簡便な薬剤耐性検出を可能とするため、操作系の改良を行っている。予め試薬等を混ぜたチップや膜を用意し、ウイルスを加えるのみで検出を可能にするなど、作業工程を簡略化していくことでより迅速な薬剤耐性の検出技術へと発展させていくことをめざす。
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Research Products
(15 results)