2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K14907
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
齋藤 康昭 北里大学, 薬学部, 助教 (00631730)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 寿命 / 老化 / D-アミノ酸 / D-グルタミン酸 / D-アスパラギン酸オキシダーゼ / 線虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は以前に、線虫を材料にしてD-アミノ酸が寿命に深く関与することを初めて見出した。酸性D-アミノ酸を立体特異的に分解するD-アスパラギン酸オキシダーゼ3(DDO-3)を欠損した線虫変異体では、野生株に対してD-グルタミン酸(D-Glu)含量が2.4倍に増加し、寿命が1.3倍に延長することを明らかにした。また、餌にD-Gluを添加するとさらに寿命が延長することを明らかにした。つまり、DDO-3はD-Gluを代謝して寿命を調節していることが示唆された。そこで、D-アミノ酸がどのように寿命制御に関与するのかを、寿命研究の成果が豊富な線虫を用いて明らかにする。 昨年度は、次の3つの研究を進めた。 1)老化線虫体内のD-Glu含量の定量:野生株体内のD-Glu含量は老化に伴って低下した。一方、DDO-3欠損変異体では、老化に伴ってD-Glu含量がさらに増加した。上記の寿命解析の結果と矛盾することなく、これらの結果はD-グルタミン酸が抗老化作用を持つということを示唆した。 2)D-Gluの組織分布:抗D-Glu抗体を用いた免疫染色の結果、野生株およびDDO-3欠損変異体のいずれにおいても精子を貯蔵する貯精嚢でのみD-Gluの局在が観察された。現在、貯精嚢と寿命の間の関連性は明らかでない。以前の解析により、DDO-3は体腔液中に存在することを明らかにした。おそらく体腔液に存在するD-Gluは本法により検出できなかったことが考えられる。 3)寿命試験:寿命延長効果がある食餌制限をDDO-3欠損変異体に行った結果、その効果は観察されなかった。一方、寿命延長作用を引き起こすインスリン受容体の機能低下をDDO-3欠損変異体に行った結果、その作用は観察された。これらの結果から、DDO-3欠損変異体の寿命延長は、インスリン経路とは異なった、食餌制限の効果を受ける経路を介していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画していた、1)老化線虫体内のD-Glu含量の定量、2)D-Gluの組織分布および3)寿命試験は予定通り進展している。これらの研究結果より、本研究は慨ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通り、DDO-3欠損変異体の寿命延長がtarget of rapamycin(TOR)経路、サーチュイン経路、酸化ストレス応答、オートファジーやUPRなどのタンパク質分解系を介して引き起こされているかどうかを寿命試験により明らかにする。ここで得られた結果に基づき、そのメカニズムの詳細を生化学的・分子生物学的に解析する。
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