2018 Fiscal Year Research-status Report
胆汁鬱滞性肝障害や動脈硬化症の治療を可能とするABCB4活性化分子の探索
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18K14918
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
池田 義人 滋賀医科大学, 医学部, 特任助教 (40736980)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 胆汁酸 / リン脂質 / ABCトランスポーター / ABCB4 |
Outline of Annual Research Achievements |
胆汁酸は、脂質の腸管吸収などに寄与する一方で、胆汁鬱滞時にはその界面活性作用により、肝組織に損傷を与えると考えられている。健常時、胆汁の主要成分のひとつであるリン脂質が、胆汁酸と混合ミセルを形成することで、胆汁酸の細胞毒性を減弱させる。胆汁中へのリン脂質排出には、肝細胞の毛細胆管膜上に発現しているABCトランスポーターの一種であるABCB4が関与している。Abcb4欠損マウスでは、胆汁中リン脂質がほとんど検出されず、肝組織は慢性的に胆汁酸による損傷を受ける。ヒトにおいても、ABCB4遺伝子の異常は、進行性家族性肝内胆汁鬱滞3型や妊娠性肝内胆汁鬱滞などの疾患と関連する。しかし、ABCB4がリン脂質を排出する機序の分子レベルでの解明はほとんど進んでいない。 これまでに、培養細胞を用いた実験により、非抱合型胆汁酸よりも抱合型胆汁酸の方がABCB4のリン脂質排出を強く促進する結果を得ていた。本年度は、マウスと培養細胞を用いて、抱合型胆汁酸がABCB4のリン脂質排出に与える影響について検討を行った。その結果、抱合型の違いによって、胆汁酸がABCB4のリン脂質排出に与える影響が異なることを見出した。さらに、胆汁酸とリン脂質の混合ミセル形成が、ABCB4のリン脂質排出を促進するために重要である可能性を示した。以上の結果より、疎水性の高いリン脂質がABCB4を介して細胞膜から親水性環境である胆汁中や培養液中などの細胞外へと排出される過程において、胆汁酸がアクセプター分子として作用していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、本研究の第一到達目標であったコール酸、ウルソデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸のタウリン及びグリシン抱合体が及ぼすABCB4リン脂質排出への影響について、マウスおよび培養細胞を用いて検討することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
胆汁鬱滞モデルマウスを用い、胆汁酸による肝組織障害に対して胆汁中リン脂質排出の促進が及ぼす影響を検討する。
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Causes of Carryover |
(理由)実験計画が比較的順調に進み、試薬の新規購入がなくても実験を進めることができたため。 (使用計画)主に、実験試薬と実験器具の購入のための物品費として使用する。
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Research Products
(6 results)