2018 Fiscal Year Research-status Report
胎盤合胞体化と内分泌機能の成熟制御機構を標的とした妊娠合併症治療戦略
Project/Area Number |
18K14926
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
野口 幸希 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 助教 (10803661)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 胎盤関門 / miRNA / 栄養膜細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
胎盤栄養膜細胞は、合胞体化することによって内分泌機能を持つ物理的関門を母体-胎児間に形成する。血管新生に働くmiRNAであるmiR-126に着目し、胎盤関門形成過程におけるmiR-126の標的遺伝子を探索した。miR-126は、その欠損マウス胎盤において、関門構成部位である胎盤迷路部の萎縮が観察される。また、miR-126の発現は、栄養膜モデル細胞であるヒト絨毛がん由来JEG-3細胞をプロテインキナーゼAシグナルの活性化によって合胞体胎盤栄養膜細胞様に分化させることで顕著に上昇した。よってmiR-126は栄養膜合胞体化に関与すると考えられる。JEG-3細胞においてmiR-126を過剰発現させたところ、栄養膜細胞の合胞体化因子であるsyncytin-1、 syncytin-2、およびsyncytin-2の受容体であるMFSD2Aの発現が増加した。一方、栄養膜前駆細胞の多能性維持に働くRNA結合タンパク質LIN28Aの発現は減少した。データベースによる解析から、LIN28AはmiR-126の直接標的であると予測された。そこで、miR-126によるmRNA3'非翻訳領域を介したLIN28Aの直接的発現制御を検討した。LIN28A mRNAの3'非翻訳領域をルシフェラーゼ遺伝子下流に挿入したプラスミドを構築し、JEG-3細胞に導入することで得られたルシフェラーゼ活性は、miR-126の過剰発現によって有意に低下した。一方、LIN28A mRNA 3'非翻訳領域に存在するmiR-126結合予測配列を変異させたプラスミドでは、miR-126の過剰発現によるルシフェラーゼ活性の低下は示されなかった。従ってmiR-126は、3'非翻訳領域を介してLIN28Aの発現を制御することで、JEG-3細胞の分化誘導に働く可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
JEG-3細胞におけるmiR-126の直接標的分子として、初期化因子LIN28Aを見出すことができ、本年度の到達目標は大方達成できた。miRNA阻害剤を用いた検討も始めており、着実に研究を進められている。ただし、LIN28A遺伝子の発現でmiR-126による合胞体化への影響が全て説明される証拠は示されず、他の標的候補遺伝子についても解析を進める必要がある。さらに今後は、内分泌機能への影響についても評価していくべきである。
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Strategy for Future Research Activity |
栄養膜細胞合胞体化過程で発現変動するマイクロRNAとその標的遺伝子について引き続き解析を進め、標的遺伝子が関門成熟に果たす役割を明らかにしていく。これらは、複数の遺伝子制御について同時に解析を進めることで効率的に結果を出す。ラット胎盤組織およびヒト胎盤絨毛組織を用いた検討から遺伝子発現と病態との関係をさらに深く探っていきたい。
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Causes of Carryover |
今年度は、主にモデル細胞を用いた解析を効率的に進めたため、費用が抑えられた。次年度は、ラットおよびヒトの胎盤から得られた試料を用いた解析も予定しているので、そのための費用が必要である。また、今年度は、近隣開催の宿泊を伴わない国際学会や国内学会にて成果発表をしたため、旅費が少額に抑えられた。一方、予定よりも多経路に亘る遺伝子発現機構を解析する必要が出たため、siRNAやmiRNA等の購入費に、今年度抑えられた予算を充てる計画である。さらに、次年度は、遺伝子レベルでの解析に加えて、タンパク質レベルでの発現解析を行うため、新たに試薬を購入する。成果発表のための学会参加費及び旅費と、論文投稿料及び英文校正料としての出費も見込まれる。機器備品は現有のものを使用するため、設備備品費は必要としない予定である。
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Research Products
(5 results)