2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K14948
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
内田 淳 山梨大学, 医学部附属病院, 薬剤師 (40816865)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光分解 / 活性酸素種 / UV |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,昨年度立案した光安定性に課題を有する医薬品として報告されている筋弛緩薬拮抗薬スガマデクスの光分解反応機構の科学的解明を主に実施した. 具体的には,スガマデクスの光分解に関与する因子について分析を行った.一般に光化学的反応は,化合物が UV 等のエネルギーにより,励起状態となり,その後 reactive oxygen species (ROS) を産生することで生じるということが報告されている.そこで,スガマデクスの光感受性・励起性評価として UV/VIS スペクトル解析,光反応性評価としてROS assay を行った. スガマデクスの UV スペクトルにおいて,370-380 nm 付近に弱い吸収を認めた.また,ROS assay の結果,スガマデクスに疑似太陽光を照射後,superoxide の産生はほとんど認めなかったが,singlet oxygen の産生を認めた.これらの結果から,スガマデクスは光反応性を有し,その光分解反応に singlet oxygen が関与している可能性を示唆し,スガマデクスの光分解反応機構の解明および光安定性改善に繋がる結果を示した.本結果において,スガマデクスは低濃度域では singlet oxygen をほとんど産生しなかったにも関わらず,高濃度域では産生する結果を示し,濃度によるスガマデクスの光反応性の変化について更なる精査を行う必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は光安定性に課題を有する医薬品であるスガマデクスにおいて,その光分解反応機構における科学的解明を行い,光安定性改善に繋がる結果を得た.しかしながら,昨年度までの成果から見出した光安定性改善を指向した新規製剤設計をスガマデクスに適用することによる光安定性改善効果などについて精査することができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得た知見をもとに,更なる分析を行い,スガマデクスの光化学的特性の精査および光分反応機構の科学的解明を行う.さらには,本研究で見出した光安定性改善を指向した新規製剤設計を適用し,光安定化効果の検証を行い,新規製剤設計の最適化を試みる.
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Causes of Carryover |
本研究計画していた光感受性医薬品の光安定性改善を指向した新規製剤設計の最適化において新型コロナウイルス感染拡大により本年度実施することができたかったため,その研究計画に使用する予定であった物品費をはじめとした額を本年度に使用せず,次年度使用額として生じた. 本年度使用せず次年度に繰り越した助成金は,本年度計画していた光感受性医薬品の光安定性改善を指向した新規製剤設計の最適化の研究計画を次年度に続行するために使用する予定である.
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