2019 Fiscal Year Research-status Report
肺胞再生を目指した分化誘導と時間治療による肺がん併発型COPD根治療法の開発
Project/Area Number |
18K14961
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
秋田 智后 東京理科大学, 薬学部薬学科, 助教 (60801157)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 再生医療 / ドラッグデリバリーシステム / COPD |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease; COPD)は世界の死亡原因の第3位であるが、破壊された肺胞を修復する有効な根治的治療法は未だ存在していない。申請者らは、レチノイン酸誘導体Am80が肺胞上皮前駆細胞の分化を促し、新規肺胞再生治療薬の候補薬物となりうることを見出している。一方で、COPD患者は肺がんを併発していることが比較的多くみられており、このAm80が肺胞再生治療薬となるためには、肺がんを悪化させないことが必要条件である。また、呼吸器疾患に関しては、喘息治療に対し、概日リズムを利用した時間治療が臨床で用いられているが、COPDでは治療効果に対する概日リズムの関与は明らかにされていない。本研究では肺がん併発のCOPDモデルマウスを作製し、腫瘍が肺気腫に与える影響と、両疾患併発時におけるAm80の肺胞再生治療薬としての有用性を、時間治療の可能性とともに明らかにし、臨床応用をより現実的なものとするために、呼吸機能が低下しているCOPD患者においても使用が可能な吸入製剤の作製を行うことを目的に、本年度は以下の検討を行った。一定時間内に4時間おきに培養細胞からmRNAを抽出し、培養細胞の時計遺伝子の発現を評価した結果、逆位相の発現リズムを確認した。また、同様にRAR遺伝子発現の詳細を検討した結果、RARβにおける遺伝子発現リズムが認められ、約4倍に発現量が増加する時刻が観察された。次に、Am80の分化誘導効果を検討した結果、RARβの発現が最大値となる時刻での分化誘導効果が認められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、培養細胞にDEX処理を行いBmal1及びPer2の発現リズム培養細胞におけるRAR遺伝子の日内変動とAm80の分化誘導効果に与える影響について明らかにすることを目指して検討を進めた。その結果、Bmal1及びPer2の発現について、逆位相の発現リズムが認められた。また、RARβにおいても遺伝子発現リズムが認められ、約4倍に発現量が増加する時刻を見出すことができた。Am80の分化誘導効果については、RARβの発現が最大値となる時刻における薬物処置により分化誘導効果が認められ、Am80の分化誘導効果にはRARの発現リズムが関与していることが示唆された。 これらの知見は、本研究の目標である肺胞再生を目指した分化誘導と時間治療による肺がん併発型COPD根治療法の開発に着実に貢献していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、肺がん併発型COPDモデルマウスにおける検討では肺がん併発時におけるAm80の肺胞修復効果を評価することを目標とする。COPD時間治療に関しては、マウス肺組織中の時計遺伝子及びRAR、その他COPD関連因子について、mRNA及びタンパク質における日内変動を評価し、肺胞修復効果に適した薬物投与時刻を明らかすることを目標とする。加えて経肺製剤の開発に着手し、吸入製剤に適した処方のスクリーニングを行うことを目標とする。
|