2019 Fiscal Year Research-status Report
神経障害に着目したがん化学療法誘発味覚障害の発症機構解析
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18K14982
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宗 可奈子 京都大学, 薬学研究科, 助教 (50816684)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 味覚障害 / がん化学療法 / 末梢神経障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん化学療法において誘発される副作用の一つである味覚障害は、抗がん剤投与中の患者の約6割に現れる主要な副作用である。この味覚障害は、食事量の低下から栄養状態の悪化や患者のQOLの低下を招き、治療を継続する上で大きな影響を与えるが、その有効な予防法や治療法は確立していない。そこで本研究は、抗がん剤が味覚刺激を伝える舌咽神経や鼓索神経において神経軸索やシュワン細胞に作用し神経軸索変性や脱髄を引き起こすこと、さらにこれらの神経障害によって生じる神経伝導障害が味覚障害発生に関与するかを明らかにし、新たな治療ターゲットの探索につなげることを目的としている。 本年度は味覚の変化をより詳細に測定するために、溶液を舐める回数を測定するリックテストを用いた味覚行動実験系を作成した。この行動実験系において、昨年度作成したシスプラチン反復投与によるモデル動物の味覚変化を測定した。またこのモデル動物から採取した味覚を司る神経である鼓索神経を電子顕微鏡で観察し、軸索障害や脱髄について解析したところ、軸索の形態を示す円形度が低下、つまり軸索障害が惹起されていることが示された。この結果から抗がん剤の投与が、味覚刺激を伝導する神経においても神経障害を惹起することが明らかとなった。この結果を踏まえて、鼓索神経の抗がん剤投与による組織学的変化だけでなく機能的変化を観察するために、電気生理学的解析を行うための検討を開始した。さらに、シスプラチンだけでなくタキサン系の抗がん剤であるパクリタキセルを用いたモデル動物の作成にも着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リックテストを用いた行動実験系が概ね確立できたこと。 また組織学的な解析についても手法が確立でき、神経障害が惹起されていることが確認できたため、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
パクリタキセルを用いたモデル動物を確立し、シスプラチンと同様に行動解析と組織学的解析を行う。 さらに、シスプラチン・パクリタキセル両モデル動物ににおいて、電気生理学的手法を用いて、機能的な変化について解析を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、当初予定していた電子顕微鏡を用いた組織学的解析において、予定より早く手法や解析法などが確立でき、実験数が少なくなったため。また年度末に予定していた複数の学会が中止となり旅費が必要なくなったため。 使用計画としては、翌年度以降の電気生理学的解析を行うための環境整備、およびモデル動物作成、行動実験等の消耗品に使用する。
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