2018 Fiscal Year Research-status Report
医療ビッグデータを用いた慢性腎臓病新規治療戦略の開発
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18K14983
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
堀ノ内 裕也 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (30716593)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 医療ビッグデータ / FAERS / 慢性腎臓病 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界でも類を見ない速さで超高齢社会に突入した日本は、社会保障費の増大を中心に様々な問題を抱えている。現在、透析予備軍である慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease; CKD)患者数は1,300万人以上と言われており、進行すれば透析が必要となる末期腎不全に至るのみならず、心血管疾患や悪性腫瘍のリスク増加にもつながる。このように、CKDを惹起・進展させないことは患者本人のみならず、医療経済学的にも非常に重要であり、CKDの病態解明と新規治療法の開発は喫緊の課題である。 本研究の目的は、未だ治療薬が存在しないCKDに対する新規治療薬を医療ビッグデータを用いたデータベース解析と基礎的検証から探索することである。 医療ビッグデータFood and Drug Administration (FDA) Adverse Events Reporting System (FAERS)を用いて網羅的解析を行った結果、第Xa因子(Factor Xa; FXa)阻害剤使用患者において尿細管間質性腎炎の報告割合が少ないことが示された。また近年、FXaが凝固カスケードへの関与のみならず、FXa受容体(Protease-Activated Receptors;PARs)を介して、炎症を引き起こすことも報告されている。 片側尿管結紮(Unilateral Ureteral Obstruction;UUO)誘導腎線維化モデルマウス(UUOマウス)の腎臓においてFXa前駆体FXとPARsの発現がsham群と比較して有意に増加していた。また、UUOマウスにFXa阻害剤を投与したところ、UUO誘導腎線維化や腎臓における細胞外マトリックス発現増加、マクロファージ浸潤、炎症性サイトカイン発現増加などを有意に抑制した。 以上の結果から、FX-PARs経路がCKDの新規治療標的になる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
データベース解析からFXa阻害剤使用患者において腎炎の報告割合が少ないことを明らかにした。UUOマウスの腎臓においてFX-PARs経路が活性化されており、FXa阻害剤投与UUOマウスにおいて腎線維化抑制効果や抗炎症効果など腎保護効果を確認することができた。 以上の研究成果を論文(Horinouchi Y et al. Sci Rep. 2018)報告することができたため、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
データベース解析と基礎的検証より抗凝固剤FXa阻害剤の腎保護効果特に腎線維化抑制効果や抗炎症効果が確認されたため、今後その腎保護効果の詳細なメカニズムについて検討を行う予定である。 また、FXa阻害剤以外の腎保護薬の探索も行う予定である。
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Causes of Carryover |
3月に行われた学会の参加費や3月納品分については精算が4月に行われるため、未使用額が生じた。 未使用額は4月に精算を行う予定である。
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Research Products
(18 results)