2020 Fiscal Year Research-status Report
メトロニダゾール誘発性脳症の発症機序としての「チアミン欠乏仮説」の検証
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18K14992
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
山岸 喜彰 武蔵野大学, 薬学部, 助教 (30805255)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | チアミントランスポーター / チアミン / メトロニダゾール誘発性脳症 (MIE) / メトロニダゾール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、メトロニダゾール(Metronidazole: MTZ) 誘発性脳症 (Metronidazole-Induced Encephalopathy: MIE) の発症メカニズムの解明を目的に以下の検討を行った。 消化管や血液脳関門 に発現するチアミン輸送担体 (THTR1、THTR2、OCT1) の発現に及ぼすMTZの影響を検討した。ヒト結腸癌由来細胞株Caco-2細胞を小腸上皮細胞様の単層膜を形成するまで培養し、複数濃度のMTZ (80、400、2,000 μM) 添加3日後にRNAを抽出しreal-time RT-PCRで目的の輸送担体のmRNA量を測定した。 薬物非添加群と比べて何れの濃度のMTZ添加群においてもTHTR1、THTR2及びOCT1のmRNA発現量に有意差はなかった。臨床MTZ濃度付近で発現が増減しなかったため、MIEの発症にこれら輸送担体の発現変動が関与する可能性は低いことが示唆された。 ヒトの主要なチアミン輸送担体であるTHTR2を発現させたイヌ腎臓尿細管上皮細胞由来細胞株MDCK II (MDCK II/THTR2) 細胞を用い、代表的基質化合物であるメトホルミンの細胞内取り込みへのMTZの影響を検討した。MDCK II/THTR2細胞を3日間培養後、基質として[14C]メトホルミン (0.2 μM)、阻害薬としてMTZ (1、50 mM) を添加し、37℃で20分間作用させ可溶化後に液体シンチレーションカウンターで放射能を測定し基質の取り込み速度を算出した。 MTZ濃度依存的に[14C]メトホルミンの取り込みが阻害され、何れの濃度のMTZ添加群でもコントロール群と比べ有意差があった。経口投与時の消化管内での推定最大MTZ濃度 (約12 mM) より、MTZによるTHTR2を介したチアミン吸収の阻害がMIEの発症に関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大防止を目的として、研究室を始めとした大学施設が長期間閉鎖された。当該措置に伴い計画していた研究活動の規模を縮小せざるを得ず、一部の実験を延期しなければならなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト結腸癌由来細胞株であるCaco-2細胞、ヒト血液脳関門のin vitroモデル細胞として汎用されるヒト脳毛細血管内皮細胞株であるhCMEC/D3細胞、及びヒトの主要なチアミン輸送担体であるTHTR2を発現させたイヌ腎臓尿細管上皮細胞由来の細胞株MDCK II細胞による評価系を用いてMTZがチアミン及びチアミン-d3の細胞内取り込み活性に及ぼす影響を検討する。 上記の各細胞株を用いたMTZによるチアミン及びチアミン-d3の細胞内への取り込み阻害活性評価のみならず、各細胞をTranswellに播種することで薬物透過性評価系を確立して、MTZがチアミン及びチアミン-d3の上皮細胞層透過活性に及ぼす影響についても評価する。また、Caco-2細胞及びhCMEC/D3細胞を用いて、MTZがチアミンリン酸化酵素によるチアミン及びチアミン-d3の代謝に及ぼす影響についても検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大防止を目的として、研究室を始めとした大学施設が長期間閉鎖された。当該措置に伴い計画していた研究活動の規模を縮小せざるを得ず、一部の実験を延期しなければならなかった。そのため、次年度使用額が生じた。次年度も同様に消耗品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)