2018 Fiscal Year Research-status Report
前立腺癌の去勢抵抗性獲得におけるカリウムチャネル発現変動の機序解明と臨床応用
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18K14994
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
丹羽 里実 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (90725532)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Ca2+活性化K+チャネル / 前立腺癌 / KCa1.1 / KCa2.2 |
Outline of Annual Research Achievements |
前立腺癌細胞の去勢抵抗性獲得や転移能獲得にともなうK+チャネル発現変動の機序を解明し、病態的意義を明らかにする。最終的には、K+チャネルが去勢抵抗性前立腺癌の治療標的として有用であることを以下の方法を用い実証する。まずはヒト前立腺癌細胞株を用いた発現・機能解析によって、『去勢抵抗性に関わる治療標的K+チャネルの解明とK+チャネル関連シグナル伝達の分子機構を解明』するため、下記の研究を行った。 ヒトアンドロゲン依存性前立腺癌細胞株 LNCaPと、チャコール処理によってアンドロゲン除去した血清を用いた培地でLNCaPを1年以上安定培養することによって樹立したアンドロゲン非依存性のヒト前立腺癌細胞株 LNCaP AIを用い、増殖能の解析を行った。LNCaPの細胞増殖は、Ca2+活性化K+チャネル KCa2阻害薬 UCL1684やCa2+活性化K+チャネル KCa1.1阻害薬 Paxillineによって抑制された。また、LNCaPの細胞増殖は1μM Enzalutamideで抑制されるが、LNCaP AIの細胞増殖は1μM Enzalutamideの薬物的去勢によって抑制されない。しかしながら、この1μM Enzalutamide投与下、LNCaP AIの細胞増殖はPaxillineにより抑制された。さらに、パッチクランプを用いた電気生理学的機能解析を行ったところ、LNCaPにおける外向きK+電流は、1μM UCL1684で抑制され、さらにこの1μM UCL1684で抑制された残りのK+電流はPaxillineによってほぼ完全に抑制された。以上ことから、前立腺癌で高発現しているK+チャネルサブタイプ KCa1.1とKCa2.2が、前立腺癌細胞の増殖に寄与することをより明確にした。 特にKCa2.2に関連する成果は、平成30年の18th World Congress of Basic and Clinical Pharmacologyにて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2018年10月10日に出産した。これに関連し切迫早産のため長期入院をした。また、産前産後の休暇および育児休業取得のため研究を余儀なく中断した。
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Strategy for Future Research Activity |
産前産後の休暇および育児休業を取得したが、2019年2月14日より業務を再開した。 当初計画していたヒト前立腺癌細胞株を用いた発現・機能解析による、『去勢抵抗性や転移能獲得に関わる治療標的K+チャネルの解明とK+チャネル関連シグナル伝達の分子機構を解明』する研究(研究項目B)は「研究実績の概要」のとおり進んでいる。しかしながら、「日本人患者由来前立腺癌組織を用いた臨床研究(研究項目A)」については、倫理的な配慮に対する準備に時間がかかり開始が出来ていない。種々の準備が整いつつあるため、今後は研究項目Aについても、早急に開始する予定である。 また、去勢抵抗性前立腺癌の研究を行うに際し使用してきたヒトアンドロゲン非依存性前立腺癌細胞株 LNCaP AIについては、これまでの実験条件として、樹立されたLNCaP AIを、さらにチャコール処理によってアンドロゲン除去した血清を用いた培地で3ヶ月安定継代された細胞 LNCaP AI CSをだけを使用してきた。しかしながら、この「3ヶ月間」という時間に強い科学的根拠は乏しい。また、このLNCaP AI CSを常に維持することが難しく、今回のように余儀無く研究が中断された際に、再度、研究環境を整えることにも時間を要する。今後は、実験条件を見直し、樹立後のLNCaP AIを直接、実験に用いることを検討していく。
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Causes of Carryover |
(理由)切迫早産に伴う長期入院と産前産後の休暇および育児休業の取得に伴う研究の中断のため。 (使用計画)上記理由に伴い、補助事業期間の延長を申請し承認を得ている。今後は投与の計画通りに進めることで遂行できる予定である。
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