2018 Fiscal Year Research-status Report
視床下部タニサイトの脂肪酸センシングにおけるFABP5の機能解明
Project/Area Number |
18K15000
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安本 有希 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (40779352)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 視床下部 / タニサイト / FABP5 / 脂肪酸代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまで視床下部弓状核グリアに発現するFABP7が、視床下部ニューロンのレプチン感受性に関与することを発見した(Yasumoto et al., Mol Neurobiol, 2018)。この研究過程において、FABPのサブタイプのひとつであるFABP5が、タニサイトという放射状グリア様の一種に発現していることを発見した。今回タニサイトのタイプ別・部位別に、改めて免染やPCRでFABP各分子種の局在を検討した。発達期の変化について、現在さらに検証を進めている。マウスに脂質コントロールダイエットを給餌し、各種脂肪酸含量の変化によって、タニサイトを含めた視床下部の神経系細胞(アストロサイト、オリゴデンドロサイト、オリゴデンドロサイト前駆細胞、ニューロン)でFABP5の発現にどのような影響が及ぶかについて検討を進めている。タニサイト同様にGFAPを発現するアストロサイトにおいて、FABP5および7の脂質滴(LD)形成について検討を加えた。興味深いことにFABP7の発現量と相関して、LDの大きさや数が変化することを明らかにし、さらに外部ストレスに対する細胞死に対して、FABP7が保護的に働くことを明らかにした(Islam et al, Mol Neurobiol, 2018)。洞様毛細血管形成へのタニサイトの関与を調べるため、正中隆起に存在する洞様毛細血管のマーカーであるMECA-32と通常の毛細血管マーカーであるPDGFRbの二重染色を行い、血管数とその分布をWTとFABP5KOマウスで比較したところ、FABP5KOマウスでは弓状核における洞様毛細血管の伸長が低下している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タニサイトにおけるFABP分子の局在解析は、ほぼ終了し、現在機能解析に取り組んでいる。野生型およびFABP5KOマウスから、セルソーターによるタニサイトの分離を試みたが、解析に十分な細胞数や純度を得ることがいまだできていないため、分離方法について、さらに検討を加えていく予定である。タニサイトにおけるFABP5分子の摂食行動への関与を証明するためには、FABP5は末梢臓器においても発現が認められるため、脳(タニサイト)特異的FABP5ノックアウトマウスを作製する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
FABP5の細胞内シグナル制御や、脂質取り込みへの関与、さらにニューロンや他のグリア細胞との機能連関について、実験を集中する予定である。解析に必須な細胞については、初代培養系の樹立が困難な場合は、細胞株や他のグリア細胞系で代替することも視野に入れる。FABP5は核内受容体PPARβ/δにリガンドを運搬することが過去の文献から判明しているため、細胞培養系を用い、FABP5+タニサイトの核内受容体シグナル制御機構を明らかにする。さらにFABP5+タニサイトの細胞内脂質代謝制御メカニズムの解明を試みる。方法としては通常食、高脂肪食、脂肪酸添加食、24時間絶食時のタニサイト内脂肪滴の定量化を電子顕微鏡により行う。脂肪酸がタニサイト細胞内でどのように代謝されるのか、その過剰摂取は脂肪滴として保存されるのか調べる。FABP5は核内受容体だけでなく、ミトコンドリアにもエネルギー源として脂肪酸を運搬することが知られているため、ミトコンドリアの形態を電子顕微鏡により観察、WTとFABP5KOマウスで比較する。FABP5KOマウスのミトコンドリア、脂肪滴、小胞体など細胞内小器官連関の解析を電子顕微鏡により行う。
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