2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K15001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
丹藤 由希子 東北大学, 加齢医学研究所, JSPS特別研究員(RPD) (70596212)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 始原生殖細胞 / マウス / 初期胚 |
Outline of Annual Research Achievements |
生殖細胞は、多細胞生物の子孫の継続を担う唯一の細胞である。哺乳類の生殖細胞は、発生に伴いシグナルタンパク質の作用で運命決定されるという考えが定説であるが、それだけでは初期胚内のわずか数細胞だけが生殖細胞に分化するメカニズムが解明されず、生殖細胞の起源となる細胞と、それを生み出す未知の因子の存在が考えられる。そこで本研究は、マウスの生殖細胞の起源となる細胞を同定することを目的としている。 前年度は、始原生殖細胞(PGC: Primordial Germ Cells)の形成にはBMPシグナル系が必要なことから、PGCが形成される直前の5.5日胚の単一細胞RNA-seqデータを用い、BMP受容体とその経路にあるSmadの発現が高い51細胞を抽出した。これらに高発現している5遺伝子をPGC形成に関わる候補遺伝子として検証していくことを考えたが、これらの遺伝子がPGC形成に関係しておらず期待される結果が得られない可能性もあるため、事前策として、他の方法の模索を行った。 まず、Otx2に着目した検証を行った。最近、出現時のPGCではOtx2が特異的に低下することが報告された。そこで、免疫染色にてPGC出現直前の5.5日胚でOtx2の発現が低い細胞の有無を検証したが、そのような細胞は見いだされなかった。 次に、遺伝子発現によらない検証方法として、遺伝子以外でPGCになるような細胞を特徴づけることが可能かを検討した。その結果、PGCに特異的な細胞内在性の蛍光波長を検出し、そのような波長をもつ細胞を5.5日胚で検出する方法は、共同研究によって可能と考えられた。今後の予定について共同研究先と調整しているが、具体的な研究の実施には至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Otx2の検証で期待通りの結果が出ず、またその後に検討を始めた細胞の内在性蛍光波長の測定については、共同研究先との調整がつかずに実験に着手できていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞の内在性蛍光波長の測定について、共同研究先とのこれまでの調整では、すぐに実験を開始することが難しいと考えられる。そこで、初年度に行った単一細胞RNA-seqデータから絞り込んだ候補遺伝子について解析を進めることとする。 また、初期胚のごくわずかな細胞がPGCに分化するメカニズムとして、本研究で仮定している生殖細胞の起源となる細胞の存在の他に、PGCになった細胞が周囲のPGCへの分化を抑制している可能性も考えられる。最近の研究で、5.5日胚よりもさらにPGCに近い遺伝子発現の特徴を持つ細胞をin vitroで誘導できることがわかった(私信)。そこで、この細胞をPGCに誘導し、そこに蛍光PGCマーカーを付加した同細胞を混ぜて培養してPGCへ分化するかを検証する。蛍光が検出されなければ、先に誘導されたPGCが分化を抑制していると考えられるため、抑制のメカニズムへと研究方針を転換する。蛍光が検出されれば、本研究の仮説は否定されないため、前述の候補遺伝子の初期胚内における局在解析を行う。
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Causes of Carryover |
前年度と本年度で予定していた実験が計画通りに進んでおらず、試薬等の実験用消耗品への支出が予定よりも大幅に少なかったことが原因である。 これらは、次年度に予定している細胞培養や初期胚における遺伝子発現解析の実験に関わる消耗品の購入に充てることとする。
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