2018 Fiscal Year Research-status Report
シグナル分子の光操作による上皮細胞集団遊走機構の解析
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18K15002
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
稲葉 弘哲 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (80791334)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 集団遊走 / 光遺伝学 / 細胞運動 / RHOA / PI3K / 上皮 |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮細胞の集団遊走は発生や創傷治癒などでみられ、細胞集団は先頭の高い運動能をもつリーダー細胞と、フォロワー細胞とに分かれる。シグナル分子の局在観察などからリーダー、フォロワーの違いは明らかになってきたが、既存の方法論では細胞集団の特定の細胞でのみシグナル分子の活性を変動させることができず、集団遊走の本質的な理解は得られなかった。そこで、本研究では時空間的にシグナル分子の活性を制御できる光遺伝学を利用し、(i)リーダー細胞が形成される分子機序、(ii)リーダー・フォロワー関係を維持する分子機序を明らかにすることを目的とした。 本年度はまずRhoAGEF, RhoAGAP, PI3Kについて、iLIDのシステムを用いて青色光依存的に細胞膜へ移行する光スイッチを作製し、レンチウイルスによってMDCK細胞に導入し、安定発現株を作製した。これらの安定発現細胞で創傷治癒アッセイを行ったところ、RhoAGEFスイッチ発現細胞で光照射時間依存的に遊走速度の低下がみられた。 また、野生型の細胞と光スイッチ発現細胞とを混合し、コラーゲンゲル上で障壁除去によって集団遊走を誘引し、2日後に形成されたリーダー細胞の光スイッチの発現の有無を調べたところ、RhoAGAP, RhoAGEFのスイッチでは光照射時にリーダー細胞となる割合が減り、PI3Kの光スイッチでは増加した。これらの結果から、リーダー細胞の形成にはPI3Kの活性とRhoAの適切な活性制御が必要であることが示唆された。 次に、RhoAGAPスイッチ発現細胞を集団遊走させ、リーダー細胞特異的に青色光を照射し、リーダー能を失うかを検討したが、目立った変化はみられなかった。青色光依存的にミトコンドリアに局在するRhoGEFスイッチを作製し、同様の検討を行ったが、リーダー能を失う細胞はみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の様に当初計画していたいくつかの光スイッチを作製し、安定発現株も計画通り作製できた。さらに、リーダー細胞の形成にPI3Kの活性化とRHOAの適切な活性制御が必要であることを示せたため。
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Strategy for Future Research Activity |
PI3K光スイッチ発現細胞を用いて、障壁除去後に細胞集団の外縁に位置する1細胞に青色光を照射することで、リーダー細胞の形成を誘引できるかを検討する。リーダー細胞を形成できた場合、下流のどのシグナルがリーダー細胞形成に重要であるかを、新たな光スイッチを作製して検討する。リーダー細胞が形成されなかった場合には、当初予定していた他のシグナル経路に注目して、同様の検討を行う。 リーダー・フォロワーの維持機構については、RhoGAPスイッチの発現量が低かったことに懸念が残るため、これまでは光スイッチの2つのパーツを2Aペプチドによって繋いだ構築を用いていたが、DNAサイズが大きいことが原因の1つであると考え、別々の構築を作製し、レンチウイルスで多重感染させ、より高発現の安定発現株を取得して、再度検討する。
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Causes of Carryover |
ほぼ、当初の計画通りに使用し、僅かに次年度使用額が生じた。非常に少額であるので、次年度の消耗品の購入に当てる。
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Research Products
(1 results)