2019 Fiscal Year Research-status Report
代謝関連分子の網羅的絶対定量に基づく骨格筋代謝研究の新展開
Project/Area Number |
18K15011
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松崎 芙美子 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (10631773)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 代謝 / 骨格筋 / インスリン / プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、マウス骨格筋構成分子をインスリン投与後経時的に定量し、骨格筋代謝制御に与える分子間相互作用の影響を解析する。令和元年度は、以下のとおり骨格筋構成分子の時間変化について解析した。 前年度に定量し、さらなる解析に使用可能と判断された約100代謝物、1,600タンパク質、16,000 RNAについて、種々のデータベースから分子機能や関連パスウェイ、骨格筋に発現している上流の制御因子等の情報を取得し、関連分子のマッチングや、事前知識と時間変化の関連性解析を可能にした。その上で、骨格筋における各分子の時間変化の特徴を捉えるために、同条件で取得・処理した肝臓データと突き合わせたところ、両臓器で直接比較可能な分子は、50代謝物、1,049タンパク質、9,404 RNAであった。さらに、インスリンにより時間変化が見られるインスリン応答分子を抽出して比較したところ、骨格筋と肝臓では異なる時間変化の傾向が確認された。特に、アミノ酸代謝経路においては、代謝物、タンパク質、RNAの全てで異なる時間変化を示す分子が存在し、分子階層を跨いだ臓器特異的制御の存在が示唆された。次に、代謝マップのネットワーク構造を基に、各代謝物濃度について代謝反応を触媒する酵素(および補間的にそのRNA)による微分方程式モデルの作成を試みたが、欠損値が予想よりも多かったことにより、既知の生化学反応機構をそのまま反映させるのは効率的ではなかった。そのため、各代謝物濃度に大きく影響を与え得る数ステップ以内の近傍の反応についても合わせて考慮することとした。また、類似の時間変化パターンを示す近傍の分子をまとめて扱うことの有効性についても検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨格筋構成分子の時間変化の解析が順調に進行した。
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Strategy for Future Research Activity |
骨格筋構成分子の計測や時間変化の特性解析が順調に進んでいる一方で、数理モデル作成には課題も見つかった。よって、引き続き微分方程式作成行程を改善することに加えて、欠損値や事前知識の不足があっても有効な解析方法の開発も試みる。特に、これまでの検討結果から複数の分子階層を跨いだ臓器特異的代謝制御が示唆されていることより、多階層ネットワークの切り口から重点的に開発を進める。まずは、取得した大規模データと事前知識を、不足分を可能な限り補いながら、かつ欠損を許容しながら統合して、状況特異的な多階層ネットワーク構造構築を可能にする。次に、構築したネットワークから特定の代謝経路等に関連するサブネットワークを抽出して、経路毎の階層横断的制御を比較・解析する。さらに、各サブネットワークを精査し、局所的にでも微分方程式モデル作成が可能か検討する。これらを骨格筋と肝臓のそれぞれで実施し結果を比較することで、インスリンが惹起する骨格筋特異的な多階層ネットワークの構造やその定量的性質を明らかにする。最終的には、総合的に骨格筋代謝に重要と推測される分子や分子間相互作用の絞り込みを行う。なお、タンパク質リン酸化の定量に関しては、これまでの検討から、リン酸化量の変動が当初の想定より小さいことが予想されたため一旦保留している。現在取得済みのデータの解析を進めながら、タンパク質リン酸化の定量の必要性を慎重に見極めることとする。
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Causes of Carryover |
タンパク質リン酸化の定量を一旦保留したことに伴い、一部の必要経費を次年度に持ち越した。定量が必要と判断されれば速やかに実施するが、そうでない場合には、持ち越した経費は解析結果の検証実験等に充てる。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] Integrated analysis through multiple molecular layers: transomic network dynamics2020
Author(s)
Fumiko Matsuzaki, Shinsuke Uda, Yukiyo Yamauchi, Masaki Matsumoto, Tomoyoshi Soga, Kazumitsu Maehara, Yasuyuki Ohkawa, Keiichi I. Nakayama, Shinya Kuroda, Hiroyuki Kubota
Organizer
The 29th Hot Spring Harbor International Symposium, Cutting Edge of Technical Innovations in Trans-Omics
Int'l Joint Research
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