2021 Fiscal Year Research-status Report
代謝関連分子の網羅的絶対定量に基づく骨格筋代謝研究の新展開
Project/Area Number |
18K15011
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松崎 芙美子 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (10631773)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 骨格筋 / インスリン / マルチオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、インスリン投与後のマウス骨格筋構成分子濃度の時間変化を定量し、骨格筋代謝制御に与える分子間相互作用の影響を解析する。令和3年度は、本研究で対象としている分子群(タンパク質リン酸化修飾を含む)について、分子間相互作用の全体像を表す多階層ネットワークの構築や、その構造/特性解析・可視化のためのスキームを次のとおり発展させた。 インスリン投与条件においてマウス肝臓より取得した代謝物・タンパク質発現・RNA・タンパク質リン酸化量の時系列データを用いて選別したインスリン応答分子を、多階層ネットワークのノードとして対応する”階層”に配置した。それらのノード分子間の制御関係の有無を、種々のデータベースより取得した既存知識やそこから予想される時間変化が見られるか等を考慮して判断し、制御関係の存在が期待される分子間にエッジを引くこととした。さらに、これらのノード分子を制御し得るタンパク質リン酸化酵素・転写因子・microRNA等から成る”媒介分子の階層”を追加することで、取得したデータと既存知識を基に可能な限り広範な分子間相互作用のネットワークを構築可能とした。その可視化にあたっては”階層”上にノードを配置することに加えて、同じ種類のノードやエッジをまとめて図示したり、リン酸化情報伝達・分子発現制御・代謝応答といった生物学的プロセスに区画することで、ネットワーク構造の特徴を捉えやすくした。さらに、特定のパスウェイや何らかのカテゴリーに属するノードとそこに連結する部分をサブネットワークとして抽出することで、構造の詳細やノード機能等の解析をより容易にした。今後、骨格筋より取得した時系列データにタンパク質リン酸化量も追加して適用することで、インスリンにより骨格筋で誘導される分子間相互作用の全体像や詳細を解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子間相互作用解析のための多階層ネットワークの構築スキーム、ネットワークの構造/特性解析・可視化方法等の開発が進んで、その成果の一部が科学雑誌に受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
まず速やかに骨格筋におけるタンパク質リン酸化定量を完了させる。今年度までに開発した解析手法をタンパク質リン酸化量を含む骨格筋時系列データに適用し、より広範なインスリン応答の多階層ネットワークを構築する。構築した骨格筋特異的ネットワークについて、その全体像解明と併せて、生物学的プロセス/経路毎のサブネットワークやネットワークダイナミクス等の観点から、その構造や特性の詳細を解析する。さらに、肝臓におけるネットワークとの比較を通して、臓器特異的かつ階層横断的なインスリン応答のメカニズム解明を目指す。代謝制御については、インスリンに応答して変動する全ての代謝物について、そこに連結するネットワークノードを抽出し、それらが代謝物プールの時間変化を説明し得るか検討する。可能であれば微分方程式モデルを作成し、定量的解析も行う。最終的には、これらの解析結果から総合的に、骨格筋代謝に重要な分子や分子間相互作用の絞り込みを行う。
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Causes of Carryover |
タンパク質リン酸化定量が完了していないため、一部の必要経費を次年度に持ち越した。持ち越した経費を用いて定量を速やかに実施し、必要に応じて解析結果の検証実験等も行う。また、新型コロナウイルスの感染拡大を鑑みて対面での学会参加等を中止した。状況を見ながら、可能であれば次年度に参加し成果発表を行う。
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Research Products
(5 results)