2018 Fiscal Year Research-status Report
心臓型アデニル酸シクラーゼを治療標的とした新規抗不整脈薬の開発
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18K15013
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
中村 隆 横浜市立大学, 医学研究科, 特任助教 (30772371)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 抗不整脈薬 / アデニル酸シクラーゼ / 不整脈 / cAMP / 水溶性誘導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗ウイルス薬であるビダラビンの水溶性を高めた誘導体であるV2Eの抗不整脈作用を検討した。 まず、心房細動に対するV2Eの効果を検討するため、当研究室で開発した心房細動モデルマウスにて検討した。野生型のマウスに頚静脈カテーテルを設置した後、高用量のノルエピネフリンを腹腔内投与し、経食道バーストペーシングにて心房細動を誘発した。心房細動誘発後1分にて、頚静脈カテーテルよりV2Eを投与し、心房細動持続時間を検討した。なお、コントロールとして生理食塩水を投与した。その結果、V2E (5 mg/kgおよび10 mg/kg)はコントロールに比較して有意に心房細動持続時間を短縮した。このことから、V2Eは心房細動に対して除細動効果を有することが明らかとなった。 次に心室性不整脈に対するV2Eの効果を検討した。カルセクエストリン遺伝子欠損マウスに対して高用量のノルエピネフリンを投与することにより心室性不整脈を誘発することができることが知られている。そこで、カルセクエストリン遺伝子欠損マウスの尾静脈よりV2Eを投与し、その20分後に高用量のノルエピネフリンにて誘発した心室性不整脈の数を検討した。なお、コントロールとして生理食塩水を投与した。その結果、V2E (10 mg/kg)はコントロールに比較して有意に心室性不整脈の発生を抑制した。このことから、V2Eの予防的投与は心室性不整脈抑制効果を有することが明らかとなった。 最後にV2Eの心機能への影響を評価する前に、ビダラビンの心機能への影響を評価した。その結果、ビダラビンは頚静脈より投与後30秒にて投与前に比較して有意に心拍数を低下させることが明らかとなった。 以上のことから、V2Eは心房細動および心室性不整脈抑制作用を示すことが明らかとなったが、ビダラビンが心拍数抑制効果を認めたことから、V2Eにおいても心機能抑制効果を有する可能性が憂慮された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に水溶性ビダラビン誘導体であるV2Eの心房細動および心室性不整脈抑制効果を動物モデルにて明らかにすることができたことから、実験の進捗状況としてはおおむね順調であるものと判断する。 しかしながら、当初安全性が高いと考えられていたビダラビンを経静脈投与することにより、心拍数抑制効果を示すことが明らかとなってしまったことから、V2Eにおいても安全性が懸念された。そのため、V2Eの心機能への影響に関する検討がやや遅れており、次年度に行う予定としている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に水溶性ビダラビン誘導体であるV2Eの抗不整脈効果を動物モデルにて明らかとしたことから、次年度以降においてはその抗不整脈効果のメカニズムを明らかとする (細胞内カルシウム動態への影響および抗酸化作用)。また、初年度にV2Eの心 機能抑制効果が懸念されたことから、ビダラビンの代謝産物を用いて抗不整脈効果をスクリーニングし、より安全性の高い高不整脈薬の開発を検討していく予定である。なお、ビダラビン代謝産物の抗不整脈効果の検討は、初年度のV2Eにおける抗不整脈効果の検討と同様に、心房細動および心室性不整脈モデルマウスにて行う。
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Causes of Carryover |
初年度においては動物実験に用いる動物数および心房細動の誘発に必要な経食道カテーテルの買い替えが少なく済んだことから、当初予定していた金額の支出よりも少なく抑えることができ、次年度使用額が発生した。次年度は、当初の研究計画に追加してビダラビン代謝産物を用いた動物実験を検討している。当初より予定しているV2Eの抗不整脈作用のメカニズムの検討および動物実験によるビダラビン代謝産物の抗不整脈作用の検討にて、翌年度分請求助成金および次年度使用額を用いる予定である。
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