2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K15015
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
吉田 慶太 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (20808159)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | RNA干渉 / C. elegans / 小胞輸送 / 分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、機能性RNAが細胞間の情報伝達を担うことが明らかになりつつあるが、それを制御する仕組みはよくわかっていない。本研究は、線虫においてRNA干渉を起こす二本鎖RNAが細胞間を伝播する現象(全身性RNAi)をモデルとして、機能性RNAの輸送機構を理解することを目指している。 本研究では、これまでに全身性RNAiに関わる2つの新規因子、rexd-1 (旧称: Y39A3CL.1)とtbc-3を同定している。今年度は、これら2つの因子と、既知の全身性RNAi関連因子であるsid-5との関係について、遺伝学的な解析を行った。 変異体同士の交配でrexd-1とtbc-3、 rexd-1とsid-5、tbc-3とsid-5の二重変異体を作製して解析したところ、各二重変異体では単独の変異体と比較して全身性RNAi異常の表現型が強くなっていた。さらに、rexd-1、tbc-3、sid-5の三重変異体では、全身性RNAiがほとんど起こらなくなっていた。以上の結果より、rexd-1、tbc-3、sid-5の3つの因子は、全身性RNAiの過程において異なる経路で機能することが明らかになった。また、顕微注入によって体内に二本鎖RNAを導入した場合は三重変異体でもRNAiが引き起こされたことから、三重変異体では二本鎖RNAの細胞からの放出が強く阻害されていることが明らかになった。このことから、rexd-1、tbc-3、sid-5がそれぞれ働く経路が、細胞からの二本鎖RNAの分泌を調節する主要な経路を構成してることが示唆された。 この三重変異体についてさらに解析を行った結果、分泌タンパク質などの細胞からの分泌には異常が見られなかった。このことから、線虫において全身性RNAiを起こす二本鎖RNAの分泌は、一般の分泌経路とは異なる特異的な制御を受けることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝学的な解析によって、本研究で同定したrexd-1とtbc-3、およびsid-5が、細胞からの二本鎖RNAの分泌を調節する主要な経路を構成することを示すことが出来た。全身性RNAiは線虫の遺伝子機能解析法として長らく利用されているが、その過程がすべて理解されているわけではない。したがって、本研究の結果は、全身性RNAiの主要な調節機構を明らかにする重要な知見となることが期待できる。来年度中に論文としてまとめる見通しがたったので、進捗状況は良好である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、rexd-1とtbc-3およびsid-5が、どのような細胞内輸送経路で機能しているのか、遺伝学的な解析によって検証する。細胞内輸送系での機能がわかっているRabタンパク質や、細胞外小胞の放出に関わる因子をコードする遺伝子の変異体と、rexd-1、tbc-3、sid-5の各変異体とを掛け合わせ、二重変異体を作製する。それらの二重変異体における全身性RNAiの応答を観察し、単独の変異体との表現型の強弱を比較することで、それぞれの因子が同一経路で働いているか否か推定する。 以上の解析によって、二本鎖RNAの細胞外への放出を司る輸送経路を明らかにし、その結果を論文としてまとめる。
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Causes of Carryover |
次年度の予算を前倒し請求して顕微鏡の蛍光光源装置を購入したが、メーカーのキャンペーンによって予定していたよりも低価格になったため、次年度使用が生じた。 次年度は、研究環境の拡充を図るため、小型のインキュベーター等の購入を予定している。また、論文を発表し、その掲載費用に充てることも予定している。
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