2018 Fiscal Year Research-status Report
培養HL-1心房筋細胞の実験系を用いた後脱分極誘発不整脈の発生機序と抑制法の解明
Project/Area Number |
18K15016
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
九田 裕一 金沢医科大学, 医学部, 講師 (50566916)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | IK1チャネル / 後脱分極 / パッチクランプ / 膜イオン電流 |
Outline of Annual Research Achievements |
HL-1細胞を専用の培養液(Claycomb培地)中で培養し、パッチクランプ用機器(Axopatch 200B, pClamp10)を用いて、タイロード液灌流条件下のホールセル・パッチクランプ法によりHL-1細胞の活動電位と形質膜イオンチャネル電流(Na+チャネル電流 INa, L型Ca2+チャネル電流 ICaL, 遅延整流K+チャネル電流 IKの速い成分 IKrと遅い成分IKs, 一過性外向きK+チャネル電流 Ito, 内向き整流K+チャネル電流 IK1, 過分極活性化陽イオンチャネル電流 If)の動態の解析を行った。 HL-1細胞には自発性活動電位を示す細胞と示さない細胞が混在していたが、特異的Ifブロッカー(Ivabradine)投与と遺伝子導入用ヌクレオフェクターを用いたKir2.1(IK1) チャネルプラスミドのトランスフェクションによる過剰発現を行うことにより自動能を消去することができた。 また、パッチクランプでの確認と並行して細胞内Ca2+濃度と膜電位の蛍光測光でも自動能の有無の確認を行い、Ivabradine投与とKir2.1(IK1)チャネルの過剰発現による自動能の消去を確認している。さらに自動能の消失を安定化させるため、HCN4(If)をノックダウンするためのshRNAウイルスベクターを作成した。 特異的IKr阻害薬 E4031 投与、交感神経作動薬であるイソプロテレノールの負荷(ICaL増強)、ジギタリス投与(Na+-K+ポンプ抑制)等によって後脱分極が誘発されることを確認し、パッチクランプ及び細胞内Ca2+濃度と膜電位の蛍光測光の両面から後脱分極発生機序を解析できる疾患モデル細胞の実験系を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね想定している結果が出ており、ほぼ30年度の計画どおり進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度の計画通りに、高濃度IKr阻害薬投与、イソプロテレノール負荷、ジギタリス投与等によりEAD・DADを誘発(活動電位記録にて確認)し、ホールセル・パッチクランプならびにCa2+測光装置(HISCA, レーザーフォトリシスユニットC-7350)を用いた細胞内Ca2+濃度測定により、後脱分極発現条件下で活動電位と細胞内Ca2+濃度の同時測定および形質膜イオンチャネル電流(ICaL, IKr, IKs他)の測定を行い、様々な薬物濃度と刺激頻度を用いて疾患モデル細胞における後脱分極の発現条件(IKr抑制度、ICaL増強度、刺激頻度の影響等)と発生機序(特にICaL再活性化・不活性化、筋小胞体Ca2+遊離の関与)を明らかにする。EADの解析では、後脱分極発現条件下での形質膜イオンチャネル電流密度を確認するとともに「電流‐電圧特性」と「ICaLの窓電流」を計測し、EAD非発現条件下と比較してその差異(ICaL再活性化の関与)を明らかにする。カテコラミン負荷時に生じる後脱分極は筋小胞体からの自発的Ca2+遊離によるとされている(Zhao et al, Am J Physiol, 2012)。そこで、活動電位と細胞内Ca2+濃度の同時測定とともに膜電位固定下での細胞内Ca2+濃度測定を行い、イソプロテレノール負荷による後脱分極発現に細胞内Ca2+濃度上昇が先行するか否か、膜電位固定下でCa2+濃度振動が生じるか否か、筋小胞体Ca2+遊離チャネル阻害薬(ryanodine)と筋小胞体Ca2+ポンプ阻害薬(thapsigargin)の後脱分極抑制効果を検証して、筋小胞体の関与を明らかにする。
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Causes of Carryover |
想定より薬品の使用量が少なかったため、購入量が減少した。 次年度の予算として、主に前年度使い切ったイオンチャネル・トランスポーター阻害薬、遺伝子導入関連試薬、細胞内Ca2+濃度・膜電位測定試薬、ウエスタンブロット・免疫染色に使用する抗体などを購入する。
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