2018 Fiscal Year Research-status Report
受精時の多精拒否におけるTPC3チャネルの役割の解明
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18K15019
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
下村 拓史 生理学研究所, 分子細胞生理研究領域, 助教 (50635464)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Two-pore Na+ channel / 膜電位依存性イオンチャネル / Na+チャネル / 電気生理学 / 膜タンパク質 / 受精 |
Outline of Annual Research Achievements |
Two-Pore Na+ Channelファミリー3(TPC3)は膜電位依存性Na+チャネルの一種である。TPC3は卵母細胞に発現しており、特に表層顆粒と形質膜への局在が認められる。表層顆粒は受精時に形質膜と融合し、多精拒否に重要な受精膜の形成に寄与する。TPC3は、ノックダウンにより受精膜の形成異常が起こるなど受精への関わりが示唆されるものの、その生理的役割はよくわかっていない。我々は、電気生理学的解析によりTPC3がホスホイノシチドとプロテインキナーゼC(PKC)により制御されていることを見出した。特に、PKCは受精時に活性が亢進することから、TPC3のPKC依存的な制御が受精に重要であることが示唆される。我々は、ツメガエル卵母細胞を用いた二電極膜電位固定法によりTPC3電流を測定し、これまでに以下のような結果を得た。 (1) ツメガエル卵母細胞に強制発現させたTPC3電流の、PKC活性化による影響を詳細に解析した。PKCの活性化剤であるPMAで処理しながらTPC3電流の変化を測定したところ、PMAによりTPC3電流は一過的に増大し、その後緩やかに減弱していく現象を見出した。PKCによる電流の増強が一過的であるということは、TPC3が受精時の特定のタイミングでのみ作用することが重要であることを示していると考えられる。 (2) 強制発現させたTPC3の電流測定により、TPC3がpH感受性を持つことを見出した。形質膜に発現させたTPC3に対して、細胞外側溶液のpHを変化させたところ、低pHでTPC3が著しく阻害されることがわかった。表層顆粒内腔は低pHに保たれているとされており、局在場所に依存したTPC3の活性制御機構の存在が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電気生理学的解析による上記の2点の結果は、ともに仮説を支持するものと考えられる。特に、pH感受性の発見からは、受精時にTPC3が表層顆粒から形質膜に移行するに伴い活性が変化する可能性が示唆される。このように、TPC3が受精に重要であるという仮説、および研究の方向性は妥当であると考えられ、研究計画のとおり次年度も解析を進めていく。特に、蛍光免疫染色などの細胞生物学的手法を用いた解析も行い、多面的に仮説を検証する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
PKC非感受性の変異体を探索し、どのような分子メカニズムによりTPC3の活性が制御されているかを確かめる。また、卵母細胞に内在するTPC3をノックダウンし、内在性のTPC3電流が強制発現の場合と同様の振る舞いをするかを確認する。さらに、蛍光免疫染色などの細胞生物学的手法を用いて、活性や局在の変化といった電流測定によって得られた知見を異なる実験手法によって補強することを狙う。
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Causes of Carryover |
本年度は、電気生理学的手法を用いた実験によりpH感受性などの興味深い観察結果が得られたため、この点に注力した結果、細胞生物学的解析に必要な試薬などの購入費が抑えられた。 次年度は、本年度と同様に分子生物学的・電気生理学的実験に必要な基本的な試薬・消耗品に加え、細胞生物学的実験に必要な蛍光試薬や細胞固定・処理試薬の購入費用が必要となる予定である。
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Research Products
(5 results)