2018 Fiscal Year Research-status Report
成体心筋細胞でのWNT/βカテニンシグナル活性化意義の解明
Project/Area Number |
18K15025
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
千葉 彩乃 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 上級研究員 (10794159)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | WNT/βカテニン / 心臓発生 / 冠血管 |
Outline of Annual Research Achievements |
WNT/βカテニンシグナルの活性化は心臓形成に必須であるが、発生初期以降の役割はほとんど調べられていない。私たちは、ゼブラフィッシュ心筋細胞でのWNT/βカテニンシグナルが成体でも持続して房室管領域 (AVC) に活性化することを見出し、その活性化意義を明らかにするために研究を行った。 初めに、AVCでのWNT/βカテニンシグナル活性化メカニズムを明らかにするために、WNTリガンドの発現をin situ ハイブリダイゼーションで調べた。AVCにはWNT2BBとWNT9Bが発現し、それらの発現は拍動に依存した。また、AVCでのWNT/βカテニンシグナル活性化も拍動に依存することを明らかにした。 次に、WNT/βカテニンシグナル活性化心筋細胞の役割を明らかにするために、WNT/βカテニンシグナル活性化心筋細胞特異的にニトロレダクターゼを発現させて、メトロニダゾール刺激依存性に細胞死を誘導した。弁形成、拍動、冠血管の形成に着目して観察したところ、WNT/βカテニンシグナル活性化心筋細胞の細胞死を誘導することで、冠血管の伸展が抑制されることを見出した。また、拍動を低下させても冠血管形成が抑制された。 今年度の結果より、拍動依存性にAVCで発現するWNTによってWNT/βカテニンシグナルが活性化し、冠血管の進展を調節する可能性が考えられた。拍動によって制御される新たな冠血管形成の調節機構の存在が示唆された。現在は、WNT/βカテニンシグナル活性化心筋細胞による冠血管調節メカニズムを明らかにするために、WNT/βカテニンシグナル活性化心筋細胞の遺伝子発現をRNAシーケンスによって網羅的に解析し、ターゲット遺伝子の探索を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りにWNT/βカテニンシグナル活性化心筋細胞の役割を明らかにし、そのメカニズムを解明するためにRNAシーケンスを用いて遺伝子発現を解析することができた。それに加えて、WNT/βカテニンシグナルが拍動依存性のWNTリガンドの発現によって制御されることを明らかにし、当初の計画にはなかったシグナルの上流を解析することができたため、計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はWNT/βカテニンシグナル活性化心筋細胞による冠血管調節メカニズムを明らかにする。まずは、RNAシーケンスでの結果をもとに、ターゲット遺伝子を決定する。阻害剤の使用で冠血管形成が調節されるか調べることで、ターゲット遺伝子を確定させる。その後、トランスジェニックゼブラフィッシュを用いて、心筋細胞特異的に過剰発現あるいはドミナントネガティブ体を発現することで冠血管が調節されるのかを明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、冠血管に表現型が現れたため、すでに研究室で所持しているトランスジェニックゼブラフィッシュを活用して研究を遂行することができたこと、参加した学会の多くが関西で開催されたことによって、旅費があまりかからなかったことが挙げられる。今後、冠血管に表現型が現れるメカニズムを明らかにするために、成魚を用いた阻害剤実験とトランスジェニックゼブラフィッシュの実験を予定しており、阻害剤の購入費用やゼブラフィッシュラインの樹立費用に充てたいと考えている。
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Research Products
(7 results)