2018 Fiscal Year Research-status Report
エクソン・スキップ治療によるDMD患者iPS細胞由来心筋の機能の検討
Project/Area Number |
18K15026
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
佐藤 充人 信州大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (10816630)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | デュシェンヌ型筋ジストロフィー / エクソンスキップ / 心筋 / iPSC |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はDMDエクソン46-55を欠失DMD患者iPS細胞を心筋に分化させ、エクソン45スキップ特異的に作成したアンチセンス核酸薬(PMO)を用いエクソン45-55欠失へと変化させることでジストロフィンの発現が回復し、心筋細胞の機能的改善が得られるかを①電気生理学的評価(細胞内カルシウム動態)、②力学的評価(Traction force microscopy)、③遺伝子発現の変化を評価(マイクロアレイ解析)することを目的としている。 先行研究で作成し保有しているエクソン46-55欠失DMD患者のiPS細胞を心筋細胞へ分化誘導した。分化した心筋細胞に対しエクソン45スキップを行い、エクソン45-55欠失を誘導した。エクソンスキップはRNAレベルで容量依存性に良好に行われたことが確認できた。次にエクソンスキップでインフレーム化したジストロフィン遺伝子で作られる短縮したジストロフィン蛋白の回復をWestern blottingで検出し得た。こちらも容量依存性にジストロフィン蛋白の発現回復が得られていた。次に心筋細胞の電気生理学的変化の解析として、カルシウム感受性蛍光プローブ(Fluo-4 AM)を用いたCaイメージングを行った。DMD患者の心筋細胞ではコントロール心筋に比べ有意に不整脈細胞の出現が多くみられた。またPMO投与前後での患者心筋細胞の変化について検討したが、PMO投与後の心筋細胞では有意差をもって不整脈細胞の減少が認められた。またCaトランジェント動態についても、PMO投与によるジストロフィン回復後で正常化傾向がみられており、心筋細胞の機能改善傾向が示唆される結果であると判断している。加えてエクソンスキップ前後での網羅的遺伝子解析を行っているが、Ca動態関連、心筋分化、不整脈に関連した遺伝子のいくつかに変化がみられており、現在これらの変化の関連性を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現状ではエクソンスキップ治療によりジストロフィン蛋白の改善により、Caトランジェント動態の改善、不整脈細胞の減少が認められる可能性について確認ができているに留まっており、本来の研究の進捗予定から遅れている。その理由として、まず患者由来iPS細胞の培養、維持に難渋しており、培養条件の見直し等を行い時間を要した。また効率的な分化誘導、心筋細胞の純化培養等についての検討も行っている。本研究ではエクソンスキッピング治療による心筋細胞の収縮力の変化を評価する方法としてTraction force microscopyを用いた力学的解析を計画している。それには蛍光ビーズを包埋したゲル作成が必要となるが、一定で均一な弾性を持ったゲルの作成を再現性をもって行うことが難しく、実際に心筋細胞の収縮力を評価するまでに至れていない。またエクソンスキップ治療後の遺伝子発現の変化について網羅的な遺伝子解析を行っているが、変化のみられた遺伝子の関連解析にも難渋しており、再評価の必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度である程度の安定的な患者iPS細胞の培養と効率的な分化誘導が可能となっており、次年度からは本研究の核心的な研究を進めていく予定である。特にTraction force microscopyを用いた力学的な機能解析が行えるようゲル作成の方歩を再検討し、再現性のある質の高いゲル作成を可能としたい。その上でPMO投与による心筋細胞の収縮能の評価を速やかに行っていく。また単一の心筋細胞の収縮能を評価するTraction force microscopyだけでなく、細胞の集合体としての心筋の力学的な機能を評価する方法についても検討している。Caイメージング、網羅的遺伝子解析については、その再現性、結果解釈等、サンプル数を増やし、再評価を行っていく。加えて、現状で得られている結果(ジストロフィン回復により不整脈細胞の減少がみられた、など)について、その病態機序の詳細を検討していく。
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Causes of Carryover |
iPS細胞培養、心筋細胞への分化誘導への条件検討等に時間を要し、実験の進捗が遅れていることが原因である。本研究では特にiPS細胞の維持、分化誘導に費用を要し、実験に用いることができる十分な量の細胞を確保できなきなかったことが挙げられる。またCaイメージングやTraction force microscopy関連の実験が予定していたよりも実施できていないことも残余額が生じた理由である。 次年度はより着実な実験の進捗が期待でき、次年度残余額と使用額を適正に使用し、計画している実験を遂行していく。申請時に計画した研究費の使用計画と大きな変更なく適正に使用していく予定である。
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Research Products
(1 results)