2018 Fiscal Year Research-status Report
ポドサイトにおける転写因子OASISを標的とした慢性腎臓病治療法の開発
Project/Area Number |
18K15027
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
尾花 理徳 大阪大学, 薬学研究科, 助教 (50745883)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 慢性腎臓病 / 糖尿病性腎臓病 / 転写因子 / ポドサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性腎臓病(chronic kidney disease; CKD)は我が国の新たな国民病と考えられ、その予防や治療の重要性が唱えられている。しかしながらその治療法は極めて限られており、新規CKD治療法の開発が必要である。そこで、新たなCKD治療標的を探索し,ポドサイトにおける転写因子old astrocyte specifically induced substance (OASIS)に着目、その役割について検討してきた.CKDの中でも特に糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease; DKD)を中心に解析した結果、①ポドサイト特異的OASISノックアウト(CKO)マウスを作製した,②生理的条件下において野生型マウスとCKOマウスとの間で体重や尿中アルブミン排泄量、腎機能等に差は認められなかった,③片腎摘+STZ誘発DKDモデルにおいて,血清クレアチニン(腎機能マーカー)の増加がCKOマウスで抑制された,④DKDモデルにおいて上昇する血糖値や尿中アルブミン排泄量に対して、ポドサイトのOASIS欠損は何ら影響を与えなかった,⑤電子顕微鏡解析やPAS染色を用いた組織学的検討より,DKDモデルにおいてポドサイト及び糸球体障害はCKOとcontrolとの間で差はないが,尿細管間質傷害はCKOで抑制された,⑥LPS誘発急性腎障害モデルにおいてもCKOマウスで尿中アルブミン排泄量は変化がない一方,腎機能の低下はCKOマウスで抑制された,ことを明らかにした. 今後は、ポドサイトのOASISによる腎障害誘発メカニズムを追究する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、2018年度は主に株化培養ポドサイトにおけるOASISの機能を明らかにする予定であったが,CKOマウスを用いた解析より,OASISはポドサイト自身の障害には関与しない可能性を示唆するデータが得られた.そのため,予定を変更し,2019年度に予定していたCKOマウスの解析に注力した.その結果,様々な腎疾患モデルにおいて,ポドサイトにおけるOASISが腎病態形成に関与する可能性が明らかとなった.よって,概ね順調に進捗していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
ポドサイトにおけるOASISの腎病態形成への関与の分子機構を明らかにする.特に,ポドサイトと尿細管間質等の他細胞との相互連関に着目し検討を進める.具体的には,ポドサイトにおいてOASISにより発現制御を受けている分泌因子を探索し,当該因子が尿細管細胞や間質細胞に与える影響を解析する.本研究成果によって、新たなCKD病態形成機構が明らかになる可能性がある。
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