2018 Fiscal Year Research-status Report
リン酸化修飾による血管平滑筋型ATP感受性カリウムチャネル制御機構の解明
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18K15030
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
山本 格士 佐賀大学, 医学部, 助教 (80762187)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 血管平滑筋 / ATP感受性カリウムチャネル / GLP-1受容体作動薬 / シグナル伝達 / リン酸化修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、研究代表者は血管平滑筋型ATP感受性カリウムチャネル(KATPチャネル)のサブユニットタンパク質の組み合わせはKir6.1/SUR2Bであり、血管平滑筋型KATPチャネルは“膜電位を一定に保つフィードバック機構”を有し、血管のトーヌス(筋緊張)および血管径の維持・調節に重要な役割を果たしていると報告した(Yamamoto et al., 2015, 2017)。 本研究は、研究代表者がこれまで行ってきた血管平滑筋型KATPチャネルに関する分子薬理学的研究をさらに発展させ、近年、心血管イベントの抑制作用が明らかとなった2型糖尿病治療薬「グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1:Glucagon-like peptide-1)受容体作動薬」を用い、血管作動性因子としての血管平滑筋型KATPチャネルに対するリン酸化修飾機序を多角的に解明することを研究目的としている。すなわち、「GLP-1受容体作動薬」投与による血管平滑筋における細胞内シグナル伝達機序の詳細を明らかにし、血管平滑筋型KATPチャネルに対するリン酸化制御機構を解明する基礎的研究である。 「GLP-1受容体作動薬」投与による細胞内シグナル伝達機序として想定されるPKAシグナル経路をより詳細に解明するため、PKAの活性化薬および阻害薬を併用し、等張性収縮実験法による「GLP-1受容体作動薬」の薬理学的作用の評価や最新技術の時間分解蛍光-蛍光共鳴エネルギー転移法(TR-FRET法:Time-Resolved Fluorescence Resonance Energy Transfer)による細胞内cAMP濃度測定などの実験系の確立・最適化を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行実験として、マウス門脈平滑筋を用いた等張性収縮実験を実施した。「GLP-1受容体作動薬」として生体内にも存在するGLP-1(7-36)amideを投与すると、自発的筋収縮は濃度依存的に抑制され、弛緩反応が観察された。また、この弛緩反応はKATPチャネル阻害薬であるGlibenclamideの追加投与にて抑制された。同様に他の「GLP-1受容体作動薬」であるExendin-4(Exenatide)またはLiraglutideを投与した場合でも、濃度依存的かつGlibenclamide感受性弛緩反応が観察された。すなわち、「GLP-1受容体作動薬」と「血管平滑筋型KATPチャネル活性化」との関連性が強く示唆された。 また、TR-FRET法による細胞内cAMP濃度測定やRNA干渉技術を用いた遺伝子ノックダウン細胞の作成といった実験系が漸く確立できたため、今後は実験条件の最適化を図りながら、データ採取や解析をさらに進める計画である。 一方、上記の実験系の効率化を図るために、マウス門脈平滑筋単離細胞からヒト冠動脈平滑筋由来培養細胞(CASMC)へ実験サンプルの移行を試みたところ、TR-FRET法では「GLP-1受容体作動薬」投与による細胞内cAMP濃度の有意な増加が認められなかった。CASMCの基礎的培養条件に種々の検討を加える他、新たに購入した別ロットの細胞でも本研究を実施している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度と同様に、「GLP-1受容体作動薬」投与による血管平滑筋型KATPチャネルのリン酸化修飾の検証を主たる目的とし、具体的には以下の実験研究を行う。 (1)「GLP-1受容体作動薬」投与による細胞内シグナル伝達機序の解明 研究代表者は既に、マウス門脈平滑筋を用いた等張性収縮実験にて「GLP-1受容体作動薬」投与による血管平滑筋型KATPチャネル活性化を示唆するデータを得ている。さらに本研究成果を発展させ、1) 最新のFRET技術による細胞内cAMP濃度の定量、2)蛍光バイオセンサーを用いた細胞内cAMP動態の経時的観察、3)シングルチャネル記録法によるKATPチャネル活性計測などを行い、細胞内シグナル伝達機序を明らかにする。また4)RNA干渉技術を用いてGLP-1受容体遺伝子ノックダウン細胞を作成し、GLP-1受容体を介した応答の有無により、上記の実験結果から推定される下流のシグナル伝達機序に違いが生じるか、否かについて明らかにする。 (2)単粒子解析法による構造解析 極低温電子顕微鏡を用いた単粒子解析法にて血管平滑筋型KATPチャネルの立体構造を解明し、さらにリン酸化によるチャネル修飾とチャネルタンパク質の3次元立体構造変化との関連を可視化する。
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Causes of Carryover |
(理由) 平成30年度の研究成果については、既に現有する機器・試薬類で代用し実験を遂行することが出来たため、予算の節減につながった。 (使用計画) 次年度の研究費(主に物品費に使用)として、有効に予算執行する予定である。
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Research Products
(2 results)