2019 Fiscal Year Research-status Report
CDK4/6阻害薬によるがん細胞の自食胞形成を伴う新規細胞死誘導の分子基盤の解明
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18K15031
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
日野 浩嗣 日本大学, 医学部, 助教 (30793468)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | abemaciclib / CDK4/6 / 自食胞形成 / 細胞死 / 分子スイッチ / リソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、CDK4/6を分子標的とする阻害薬が3種類(abemaciclib, palbociclib及びribociclib)開発され、乳癌等で臨床応用されつつある。これまでの研究から、CDK4/6が細胞周期停止のみならず殺細胞効果を示すこと、阻害薬のうちabemaciclibのみが強力な自食胞形成を誘導することを明らかにし、abemaciclibによる細胞死がアポトーシス等の典型的なものとは全く異なる新規細胞死であることが示唆された。これを踏まえ、本研究では「abemaciclibによる自食胞形成を伴う新規細胞死誘導メカニズムの解明」を目的とした。 初年度には、abemaciclibにより誘導される自食胞はリソソームに由来し、リソソームが酸性化、膨化することでリソソームでのタンパク質分解機能が阻害されていることを示唆する結果が得られた。二年目にあたる本年度は、自食胞形成と細胞死の関連を検討した。この検討により、abemaciclibがリソソームの膨化を誘導した際には、mTORC1の活性が阻害されており、mTORシグナルが乱されていること、免疫蛍光染色によるガレクチンの局在観察より、リソソームの透過性上昇は限定的にしか見られないことを明らかにし、いわゆるリソソーム細胞死といわれる細胞死の様式とも異なることを明らかにした。加えて、abemaciclibがリソソームの膨化、自食胞形成を誘導する条件下では、細胞内のカルシウム濃度の上昇が認められることも明らかにしている。これらの結果をまとめ、Cancer Science誌に論文を発表した(in press)。これらに加え、abemaciclibによるリソソーム膨化を含む様々な表現形とCDK4,6との関連性を明らかにするべく、CDK4および6のノックアウト、ノックダウン細胞株の樹立を現在試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に明らかにした自食胞がリソソームに由来する点を踏まえ、リソソームの機能障害と細胞死との関連に関する検討を進めた。mTORシグナルの阻害、細胞内カルシウム濃度上昇といった現象が起こることを明らかにした一方で、リソソームの膜透過性上昇、破綻はあまり見られないことも明らかとなり、リソソームの機能障害と細胞死との具体的関係性の解明が引き続き課題として残っている。これらの初年度と二年目までの成果をCancer Science誌に投稿、発表することができた。 自食胞形成の分子スイッチ同定は、自食胞形成がリソソームに由来することやバフィロマイシン(V-ATPase阻害薬)で阻害されることを念頭に、V-ATPaseのノックダウン株作製を開始している。また、分子スイッチもしくはその上流因子の候補として、abemaciclibの本来のターゲットであるCDK4,6とその基質についても、ノックアウト、ノックダウン細胞株の樹立を進めている。これらに加え、同様の表現形となる報告がある複数の因子について、自食胞形成の分子スイッチとしての可能性を検討する準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
自食胞形成の分子スイッチについては、候補の一つであるV-ATPaseについて、ノックダウン株作製を進め、解析に供する。V-ATPaseは複雑なタンパク質複合体であり、構成因子によってはノックアウト、ノックダウン株が得られないものや機能に全く影響しないものもあるため、文献情報等も踏まえて検討を続けていく。また、CDK4/6自身の自食胞形成を介した細胞死への寄与を検討するため、CDK4/6のノックアウトもしくはノックダウン株の構築を進め、解析することでCDK4/6との関連についても検討する。CDK4/6の両方をノックアウトもしくはノックダウンすることも検討したいが、CDK4/6のダブルノックアウト細胞株は細胞周期停止を招くことから取得が困難であることがこれまでの検討で明らかになっているので、ダブルノックダウンやそれぞれのノックアウトとノックダウンの組み合わせにより、CDK4,6の両方が阻害された際の影響を検討、abemaciclibの作用を再現可能か検討する予定である。 最近、リソソームの膨化、酸性化を示す因子、薬剤の報告等が複数見られることから、それら因子についても同様の手法等で検討を行いたい。必要に応じて、それらの因子を研究対象としているチームと情報交換や連携を図ることも検討中である。
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Causes of Carryover |
本年度、消耗品や旅費、遺伝子配列解析委託等に計画的に使用し、最終的に100円未満の端数額が残額として生じた。この端数額で購入可能な消耗品等は限られ、効率的使用ではないと判断した。このため、次年度に繰り越して効率的に使用するほうが望ましいと判断した。翌年の消耗品購入に際し、当該残額を合わせて使用する計画である。
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Research Products
(8 results)