2019 Fiscal Year Research-status Report
脳卒中後再生モデルにおけるneurovascular unit再構築機構の解明
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18K15035
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
西中 崇 近畿大学, 医学部, 助教 (50786184)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脳卒中 / neurovascular unit / 血管内皮細胞 / マクロファージ / 終末糖化産物 / 血管新生 / HMGB1 / 血小板 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、脳卒中自然発症モデル動物(SHRSP)において、neurovascular unit(NVU)障害の評価系を確立し、障害領域ではマクロファージの浸潤と再生誘導因子であるhigh mobility group box1(HMGB1)陽性細胞数の低下を認めた。また、SHRSPの組織サンプルを回収する過程から、血球系の変動について新しい知見を得た。令和元年度は、HMGB1、再生を誘導する運動の関係に着目し、血球系の変動に関して詳細な解析を行い、以下の結果を得た。 SHRSPにおいて、脳卒中発症の3週間前に血小板の大型化とリンパ球の減少を認めた。一方、血清HMGB1量は正常ラット(Wistar系ラット)と同程度であった。発症1週間前では、血小板数の低下を認め、血清HMGB1量も低下していた。一方、SHRSPの赤血球はWistar系ラットと比較して小球性を示したが、赤血球に関連するパラメーターの変動は脳卒中発症との関連は認められず、Wistar系ラットと同様であった。運動は血小板数の低下を改善したが、血小板の大型化と血清HMGB1量の低下には影響しなかった。したがって、血小板の大型化とリンパ球の低下は脳卒中の発症を事前に予測するために有用な特徴であり、バイオマーカーとして利用できる可能性がある。 in vitro 実験系において、HMGB1単独処置では血管新生に影響しなかった。HMGB1の対照実験として共通の受容体に作用する終末糖化産物(advance glycation end products、AGEs)を検討したところ、血管新生の促進作用が認められた。さらに、マクロファージ細胞株の実験系において、このAGEsの作用を抑制する化合物について比較検討を行い、その成果を論文として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血球系の解析によって、脳卒中発症を事前に予測できるバイオマーカーを見出し、論文として投稿中である。HMGB1に関しては、運動による影響や血管新生に対する効果を確認できなかったが、共通の受容体を有するAGEsの作用を確認することが出来た。AGEsの作用を抑制する化合物についての知見も得ることができ、論文として報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
血管内皮細胞とマクロファージの共培養系においてAGEsの作用を解析する。AGEsは血管内皮細胞株、マクロファージ様細胞株の両方の細胞に取り込まれるが、その取り込み量に関してはマクロファージ様細胞株の方が多い。また、2つの細胞株においてAGEsの取り込みには別々の機構が関与する知見も得ている。このような違いが共培養条件下における血管新生に影響するかについて解析する。これまでに回収しているSHRSPの組織・血清サンプルにおいて、AGEs量やその受容体の発現変化について解析を行う。運動によりAGEs量や受容体発現に変化が認められるかについて検討する。
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Causes of Carryover |
HMGB1に関しては計画通りに研究が進められなかったが、それに代わるメディエーターについての知見を得ているので、引き続き解析を進めていく予定である。
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