2018 Fiscal Year Research-status Report
胎児発育不全の予防を目指したユビキチン転移酵素CNOT4の生理機能の解明研究
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18K15038
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
山口 智和 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (30749940)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | CNOT4 / ユビキチン転移酵素 / 胚発生 / RNA結合タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
ユビキチンリガーゼCNOT4の哺乳類組織における生理機能を明らかにするため、平成30年度は下記の項目について検討した。 1) CNOT4変異マウスの胚発生:ユビキチン転移を不活性化したCNOT4 RING変異マウス胎児は野生型に比べ胎内での発育遅滞を認めた。これが胎盤形成に起因するものかを検討するため、野生型の正常胚から作製したテトラプロイド胚(4倍体胚)とCNOT4変異マウス由来のディプロイド胚(2倍体胚)との凝集胚を作製し、仮親の子宮に移植し、個体発生させた。この場合、胎盤は野生型テトラプロイド胚に由来するものであるにもかかわらず、CNOT4変異マウスの個体発生率は依然として低く(部分的な胎生致死)、通常発生と同様の発生遅延を認めた。この結果から、CNOT4 RING変異マウスの成長抑制は胎盤形成とは独立した要因であることがわかった。 2) CNOT4によるユビキチン化修飾の評価:前年度にCNOT4の相互作用因子としてRNA結合タンパク質X (RBP-X)を同定した。in vitroアッセイでRBP-Xのユビキチン修飾を評価したところ、ユビキチン蛋白のK63残基を介するポリユビキチン鎖が形成されたことから、RBP-Xの蛋白分解よりも構造変換などによるRNA認識やシグナル伝達をCNOT4が制御していることが考えられた。 3) CNOT4ノックダウンによる遺伝子発現変化::siRNAによりCNOT4ノックダウンを行ったHEK293TについてRNA-seq解析を行った。有意な発現変動を示した600遺伝子のうち発現減少遺伝子が450個を占め、GO解析の結果、その多くがembryonic organ developmentを含む複数の発生関連の termに含まれる遺伝子であった。このことから、胎生期におけるCNOT4は、胚発生に寄与するmRNA発現を正に制御している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CNOT4変異マウスの解析ならびに培養細胞、試験管内アッセイ系などの各種解析により、CNOT4の生理機能として、CNOT4がRBP-Xをユビキチン化修飾することにより、個体発生、細胞増殖に不可欠な役割を担うことが明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きCNOT4によるRBP-Xの制御機構を明らかにすることを目的に研究を行う。これまでの解析で、CNOT4によるRBP-Xのポリユビキチン化修飾を明らかにしたが、実際にRBP-X中のどのリジン残基がユビキチン化に寄与しているのかを明らかにできていない。予備的な検討として、報告されているRBP-Xのドメイン構造を欠損するようにRBP-Xのトランケートを数種作製し、ユビキチン化の評価を行っている。その結果、RBP-XのN末端側を欠損させた発現タンパク質においてユビキチン修飾が消失したとことから、少なくともこの領域にCNOT4との結合領域やユビキチン化リジン残基などのユビキチン化に必要な構造があるのではないかと考えている。これについては、リジン残基に変異を導入したRBP-Xのユビキチン化動態を解析することで、ユビキチン化リジン残基の同定を行う。また、この領域には、2つのRNA認識モチーフ(RRM)が存在していることから、同領域へのユビキチン化修飾がRBP-Xのドメイン構造と標的mRNAとの結合性を制御している可能性が考えられる。RBP-Xはその結合により、標的mRNAの安定性、局在、翻訳を制御することが報告されており、今後はCNOT4の発現に連動して、それら標的遺伝子への結合活性や、mRNA発現量に変化があるのかをRNA免疫沈降法やqPCR法により明らかにしていく。また、最近CRISPR/CAS9によるゲノム編集を用いてCNOT4ゲノム領域へのloxP配列の挿入を行い、CNOT4 floxマウスを作出した。今後このマウスをCAG-Cre/Esr1や各組織特異的にCreリコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウスと交配させ、CNOT4の成体マウス組織での役割や組織特異的な生理機能について解析を行う。
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Research Products
(7 results)