2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K15039
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小林 翔 山形大学, 大学院医学系研究科, 助教 (10779490)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | グルタチオン / シスチントランスポーター / マクロファージ / メタボローム / プロテオーム |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内の主要な抗酸化物質であるグルタチオン(GSH)の合成においてシステイン(Cys)は制御因子であり、Cysの供給不足はGSHを枯渇させ細胞死(フェロトーシス)を誘発する。多くの培養細胞ではシスチントランスポーターであるxCTに依存してCysが供給されGSHが維持されている。申請者はxCT欠損(KO)マウス由来のマクロファージがCysとGSH含有量が極めて低いにも関わらず、数日間生存したことから、マクロファージではGSHに依存しない新規の細胞生存機構の存在を見出した。本研究ではプロテオミクス解析とメタボロミクス解析を併用し、マクロファージのGSH非依存的な細胞生存の分子機構を解明することを目的とする。 野生型(WT)とKOマクロファージから抽出したタンパク質をペプチドに分解し、ペプチドのアミノ基と反応する安定同位体標識試薬を用いたプロテオミクス解析を行なった結果、KOマクロファージではCytosolic non-specific dipeptidase 2(CNDP2)由来のペプチドが多く検出された。KOマクロファージではCNDP2タンパク質量が増加していることを免疫ブロット法により確認した。CNDP2はGSH分解により生じるシステイニルグリシンの分解活性を有することが報告されているため、酵素学的解析を実施し、WTよりもKOマクロファージのシステイニルグリシンの分解活性が高いことを明らかにした。以上の結果に加えて、LC-MSを用いたメタボロミクス解析により、マクロファージでは細胞外でのGSH分解と連動して、細胞内でCNDP2がシステイニルグリシンを分解することで効率的にCysを再利用する経路が活性化されていると考えられた。CNDP2が肝臓や腎臓、脳などの組織に分布することからも、このGSH分解系を介したCysの獲得系はマクロファージに限らず普遍的に存在する可能性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
KOマクロファージでは高く発現する遺伝子としてCNDP2を見出した。CNDP2はGSH分解によって生じるシステイニルグリシンを特異的に分解することが報告されているが、その生理機能は十分に解明されていない。そのため、現在、CNDP2生理機能解明に向けてゲノム編集技術を用いてCNDP2欠損培養細胞やマウスの樹立に着手した。
|
Strategy for Future Research Activity |
GSH分解を介したCNDP2によるCys獲得系の生理機能を解明するため、ゲノム編集技術によってCNDP2を欠損する細胞株およびCNDP2を過剰発現する細胞株を樹立し、シスチン欠乏下でのGSHやシステイニルグリシンの添加が細胞生存に影響を及ぼすかについて検討する。さらに、CNDP2の遺伝子変異は糖尿病性腎症との関わりあることが報告されていることから、腎臓中のCNDP2がフェロトーシス抑制因子として機能する可能性が考えられる。ゲノム編集技術を用いて、CNDP2欠損マウスを樹立し、マクロファージでのCNDP2の機能解析と共にCNDP2欠損マウスの表現型の解析を行なう。 xCT-GSH系に依存せず抗癌剤耐性を持つ癌細胞での生存機構を調べるために、xCT阻害剤/抗癌剤耐性細胞を選抜し、その細胞生存を検討する。メラノーマやグリオブラストーマなどの悪性度の高い癌細胞に段階的にxCT阻害剤を投与して、xCT阻害剤耐性癌細胞に対して、さらにシスプラチンやドキソルビシンなど既存の抗癌剤に抵抗性を示す癌細胞を選抜する。選抜された細胞に対してCNDP2の発現を調べ、CNDP2の阻害剤やゲノム編集技術を用いた欠損が細胞生存に影響を与えるかについて調べる。
|
Research Products
(12 results)