2018 Fiscal Year Research-status Report
多能性幹細胞を用いたin vitroでの皮質脊髄路の構築
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18K15046
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂口 秀哉 京都大学, iPS細胞研究所, 特別研究員(PD) (30779153)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大脳オルガノイド / ヒト多能性幹細胞 / 脊髄オルガノイド / 分化誘導 / 神経機能評価 / ハイコンテントアナリシス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、繰越申請でも記載した通り研究進捗が当初の予定より良好であり、大脳皮質の分化誘導および脊髄組織の分化誘導が初年度のうちに完成した。 まず、SFEBq法を用いて3次元での大脳皮質組織および脊髄組織の誘導を行った。非血清存在下に神経組織が誘導されることを元に、まずSFEBq法によって神経上皮の誘導を行い、Wnt/BMP阻害剤の添加によりそれらの神経組織を吻側化する事で大脳皮質領域の誘導を行い、逆にWntシグナルやレチノイン酸シグナルを増強することで神経組織を後方化することで脊髄組織の分化誘導を行った。分化誘導開始後30-40日で3次元のヒト大脳組織および脊髄組織を得ることができた。 最後に得られた大脳組織の機能評価として細胞内カルシウム動態をライブイメージングで観察した。大脳オルガノイドを分散培養することで自己組織的な2次元神経ネットワークの形成を行い、Fluo4-AMで前処理した後に共焦点顕微鏡でイメージングをしたところ、分散2週後では各神経の活動がバラバラに見られたが、分散4週では、神経活動には同期発火するものとそうでないものが見られた。この神経活動を評価後、CNQXで処理して、神経活動を一旦止めた後の継時的変化を観察したところ、一旦止まった神経活動はCNQX洗浄後10分ほどから活動を開始し、洗浄後30分には処理前と同じ割合の神経細胞が活動していた。しかし、その活動細胞および活動パターンは処理前とは異なるものであった。これらの活動の時系列変化を評価する系を立ち上げ、定量化および可視化した。 これらのうち、脊髄組織の分化誘導についてはDevelopment誌に報告してあり、大脳組織の神経活動評価についてはStem Cell Reports誌に受理されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、繰越申請でも記載した通り研究進捗が当初の予定より良好であり、大脳皮質の分化誘導および脊髄組織の分化誘導が初年度のうちに完成している。 当初はこれら2つの領域を接着させて複雑な組織をin vitroで分化誘導する方向で考えていたが、大脳皮質組織の分化誘導時に行った機能解析の結果は、本研究計画における「分化誘導した大脳と脊髄組織を用いた皮質脊髄路の再構築」以上にインパクトの高い研究で、現在国際的にみても神経科学領域および幹細胞医学領域における最先端かつホットトピックなデータでもあり、国際的に競争が激しい分野であることがわかった。 そのため、国際競争の中で学会発表および論文発表を急いでおり、計2本の英文雑誌への受理に至っている(Ogura and Sakaguchi et al. Development 2018, Sakaguchi et al. Stem Cell Reports, in press)。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度:平成30年度の研究をもとに、皮質脊髄路構築の実験へ進むが、ここでは大脳・脊髄組織そのものの接着による立体構造を持つ皮質脊髄路の構築を目指すと同時に、得られた神経ネットワークの機能評価についての解析にも注力する。具体的には、分化誘導した大脳皮質組織における同期・非同期発火のパターンについて、どのような薬理学的特性を持つかということを含めて評価し、これまでに報告のなかったヒト大脳ー脊髄ネットワークにおけるカルシウム発火動態を詳細に評価した世界初の評価をする。皮質脊髄路の構築については、分化誘導した大脳・脊髄組織をトランスウェルなどを用いて接着させる培養を行うことで達成させる。理想的には、脊髄運動ニューロンの最終出力先である筋肉まで含めた回路とすることで、大脳ー脊髄ー筋肉の運動系に関わるパーツ全てを繋ぐモデルを構築し、筋萎縮性側索硬化症などの運動系が病変の主体となる疾患のモデリングに繋げたい。
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Research Products
(10 results)