2018 Fiscal Year Research-status Report
Functional analysis of DCLK1 in pulmonary cancer associated with IPF
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18K15059
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
丸山 順一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (30723639)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | DNA損傷修復 / 特発性肺線維症 / DCLK1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、DCLK1の過剰発現がDNA損傷修復機構を阻害するという結果について論文報告を行った(Lu et al. Biochem. Biophys. Rep. 16 130-7)。実験面では、DCLK1によるDNA損傷修復抑制機構の詳細な分子機構検討と、特発性肺線維症肺組織におけるDCLK1発現誘導機構の解析に力点を置いた。加えて、DCLK1をタモキシフェン依存的に発現誘導できるマウスの作製を開始した。 1) DCLK1によるDNA損傷修復抑制機構の解析 DCLK1過剰発現はRNF168のDNA損傷依存的核内foci形成を阻害する。そこで、DNA二重鎖切断損傷に際して誘導されるRNF8依存的ヒストンH1ユビキチン化と、引き続くRNF168集積に対する影響を検討した。ヒストンH1としてH1.2を用いて検討したところ、DCLK1過剰発現によるユビキチン化H1.2量の減少は観察されなかった。一方で、DCLK1とRNF168、DCLK1とH1.2が相互作用することを見出した。さらに、in vitro binding assayにより、DCLK1がRNF168とH1.2の相互作用を阻害することを示唆する結果を得た。以上の結果は、過剰量のDCLK1はRNF168-H1.2相互作用系に介入して下流のDNA損傷修復プロセスを阻害する可能性を示唆している。 2) DCLK1発現誘導機構 RAW264.7細胞の培養上清をH1299細胞に処置することでDCLK1タンパク量の増加を誘導できる結果を得ていたことから、炎症性サイトカイン依存的なDCLK1発現誘導機構の存在を想定した。そこで、可能性のあるサイトカインをH1299細胞に逐次処置してDCLK1タンパク量増加が観察できるか否かを検討したところ、Lymphotoxin alphaがDCLK1タンパク量増加作用を有していることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DCLK1によるDNA損傷修復抑制機構について、DCLK1がH1.2-RNF168の相互作用に介入している可能性を見出すことができた。DNA損傷修復のシグナル伝達は多段階に渡る複雑なものであり、その複雑なメカニズム中において標的となりうる素過程を見出だせたことは大きな進歩であると考えている。また、DCLK1の発現を誘導できるサイトカインとしてLymphotoxin alphaを見出すことができた。Lymphotoxin alphaは特発性肺線維症における炎症成立に関与している可能性を指摘する先行研究もあり(da Silva Antunes et al. J. Immunol. 195 2429-41)、特発性肺線維症肺においてDCLK1が高発現するメカニズムを説明できる可能性がある。 上記に加えて、本年度はDCLK1がDNA損傷修復を抑制する結果を論文発表することができた。 以上の進捗が見られたことから、本年度において本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、培養細胞系を用いてDCLK1によるDNA損傷修復抑制機構の生化学的解析を進めていく。主に本年度に標的過程として見出したH1.2-RNF168相互作用に対するDCLK1の影響の解析を中心とするが、その周辺の素過程であるRNF168依存的H2Aユビキチン化に対する影響なども検討予定である。 また、Lymphotoxin alphaによるDCLK1発現誘導機構についても解析を行う。Lymphotoxin alphaはalternative NF-kB経路の活性化を誘導すると報告されており、主にそのシグナル伝達経路の関与を検討していく予定である。 また現在、タモキシフェン依存的にDCLK1発現誘導を行うことができるマウスを作製している。本マウスに経気管的にタモキシフェンを投与することで、肺においてDCLK1過剰発現をpatchyに誘導することが出来る。この実験系を用いて、肺におけるDCLK1過剰発現が肺がん成立に対して十分性を持つか否かを検討する予定である。早急に当該マウスの樹立を目指したい。
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Causes of Carryover |
予め想定していた物品額よりも実際は安価に購入できたことにより誤差が生じた。次年度での物品費に繰越して使用する予定である。
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