2018 Fiscal Year Research-status Report
動脈硬化病態形成機構におけるマクロファージに高発現するMKL1遺伝子の役割
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18K15060
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
安 健博 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (40723771)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | MKL1 / 動脈硬化 / マクロファージ / 細胞増殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
マクロファージにおけるMKL1遺伝子の高発現性が冠動脈硬化症の遺伝的危険因子であることから、樹立したマクロファージ特異的にMKL1遺伝子を高発現するトランスジェニックマウス(MKL1-TgM)を用いて、MKL1遺伝子の動脈硬化症における役割をin vivoで検討した。その結果、動脈硬化モデルであるApoE欠損マクス(ApoE-KO)と交配して作製したApoE-KO/MKL1-TgMは、コントロールであるApoE-KOに比べ、動脈硬化が促進し、動脈硬化巣におけるマクロファージの蓄積がより顕著であることを見出した。これらの知見から、マクロファージにおけるMKL1遺伝子の高発現性は、動脈硬化の促進因子であることが証明できた。次に、MKL1遺伝子による動脈硬化促進の分子メカニズムを解析するため、MKL1の発現増強によるマクロファージ機能への影響を検討したところ、骨髄由来マクロファージ(BMDMs)の細胞増殖が亢進していた。また、動脈硬化巣におけるマクロファージを検討したところ、ApoE-KO/MKL1-TgMでは動脈硬化巣へ集積したマクロファージの増殖能が亢進していた。さらに、BMDMsを対象としたマイクロアレイ解析を行い、MKL1-TgMのマクロファージにおける遺伝子発現制御を検討した結果、MKL1はcyclin-dependent kinase inhibitors (CDKIs)などの細胞増殖関連遺伝子の発現を制御することが明らかになった。一方、動脈硬化症は脂質代謝機能の異常が大きく関わっていることが知られているが、ApoE-KO/MKL1-TgMでは脂肪萎縮症が生じていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MKL1遺伝子の動脈硬化巣マクロファージにおける役割を検討し、MKL1は、マクロファージの増殖を亢進する一方、アポトーシスを抑制することも明らかにした。また、MKL1の高発現性は、PI3K/Akt及びMAPK/Erkといった細胞生存・増殖に関わるシグナル経路をさらに活性化することを見出し、MKL1は動脈硬化巣におけるマクロファージの蓄積に大きく寄与することが示唆された。 一方、ApoE-KO/MKL1-TgMでは脂肪萎縮症が生じていたことから、MKL1は動脈硬化巣のマクロファージのみならず、脂肪組織マクロファージ(ATMs)の機能制御を介して脂肪組織の恒常性に関与し、動脈硬化進展に寄与する可能性が考えられた。脂肪萎縮症はATMsの分化活性化異常と関連するが、ApoE-KO/MKL1-TgMのATMは、炎症型(M1)に分化活性化が偏っていることが明らかとなった。今後、ATMsの動脈硬化における役割について検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
MKL1が脂肪組織マクロファージ(ATMs)の分化活性化を制御することがわかったが、ATMsに発現するMKL1の動脈硬化における役割は不明である。脂肪組織の移植実験から、脂肪組織の良好な定着が観察されたため、ApoE-KO/MKL1-TgMの脂肪組織をApoE-KOに移植し、ATMsに発現するMKL1の動脈硬化における役割を検討する。さらに、clodronate liposomeを用いてATMsを除去することが可能であるため、ATMsを除去した脂肪組織をApoE-KOに移植する系を用いて、動脈硬化進行におけるATMsの役割を明らかにする。 MKL1遺伝子を標的とした動脈硬化症の予防法・治療法として、MKL1が制御する動脈硬化のエフェクター分子に着目した研究を進める。本研究において、MKL1はマクロファージの多彩な機能を制御し、動脈硬化進展の促進因子であることが証明されたため、今後、動脈硬化巣におけるマクロファージでMKL1の標的遺伝子群を網羅的に解析することで、エフェクター分子の候補を同定し、その動脈硬化における役割を細胞レベル及び個体レベルで検討する。
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Research Products
(2 results)