2018 Fiscal Year Research-status Report
ORP11はどのようにしてNPC細胞のコレステロール蓄積を軽減するのか
Project/Area Number |
18K15066
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
仲宗根 眞恵 鳥取大学, 医学部, 助教 (30632947)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ニーマン・ピック / コレステロール / 小胞輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニーマン・ピック病C型 (Niemann-Pick disease type C: NPC) の原因遺伝子産物 NPC1 は、エンドゾーム系からのコレステロールの排出に必要な膜蛋白質であり、欠損細胞では後期エンドゾーム・ライソゾーム (LE/Lys) にコレステロールが蓄積する。一方、ORP (OSBP-related protein) ファミリーは、OSBP (oxysterol-binding protein)とそのホモログ (ORP1~11) 計12種類の蛋白質からなり、その各々が細胞の特定の場所で、特定の脂質のセンサーまたはキャリアーとして働くことが明らかになりつつある。われわれはこれまでに、NPC1欠損CHO細胞にORP11を過剰発現するとコレステロールの蓄積が減少・消失すること、ORP11は低分子量G蛋白質Rab9と複合体を形成することを発見した。本研究の第一の目的は、ORP11がLE/Lysからのコレステロール排出を促進する機序を明らかにすることである。 この目的に向かって、ORP11とRab9の結合様式をさらに詳細に検討し、結合に必要なORP11の配列部位を同定し、さらにその結合は直接であり介在蛋白質は不要であることを示した。また、NPC1欠損CHO細胞ではコレステロール以外に糖脂質もLE/Lysに蓄積するが、ORP11を過剰発現させることで糖脂質の蓄積も軽減することがわかった。これらの結果はORP11が(非小胞性輸送ではなく)Rab9依存性の小胞輸送を活性化することを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの主要な結果は、以下の3点に要約される。 第一に、Rab9の結合に必要なORP11の配列部位を同定した。ORP11は2つの脂質結合部位PHD (pleckstrin homology domain) とORD (OSBP-related domain) をそれぞれN末端とC末端に持つ。PHDとORDに挟まれた177アミノ酸の配列をMidseqと呼ぶ。ORDを欠失するリコンビナント、ORPとMidseqの両方をの各々を欠失するリコンビナントを作成し、GFP標識Rab9との共免沈実験を行ったところ、Rab9はMidseqに結合することが判明した。このことはRab9とORP11の結合は、ORP11の脂質結合能に依存しないことを示唆する。 第二に、Rab9とORP11が直接結合することをGST (glutathione-S-transferase) 融合蛋白質を用いたin vitroの結合実験で証明した。具体的には、Rab9-GSTから切り出したRab9は、グルタチオン・ビーズに固相化したMidseq-GSTに結合した。 第三に、NPC1欠損CHO細胞にORP11を過剰発現させると糖脂質の蓄積も軽減することをBODPY標識ラクトシルセラミドをプローブとして証明した。すなわちORP11が(非小胞性輸送ではなく)Rab9依存性の小胞輸送を活性化することが示唆された。 これらの結果は、ORP11 が LE/Lys からの脂質排出を促進する機序を明らかにする上で重要な知見であり、研究はおおむね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
NPC1欠損CHO細胞においてORP11がLE/Lysからのコレステロール排出を促進する機序について「ORP11がRab9のエフェクターとして脂質の小胞輸送を促進する」という仮説を設定し、その検証を試みる。その一つの手段としてORP11/Rab9 複合体に含まれる他の蛋白質の同定をめざす。この複合体に含まれる蛋白質の第一の候補としてORP11との結合活性が報告されているORP9に注目している。始めに、ORP9はORP11/Rab9複合体に含まれるのか否かを共免沈実験などで解析する。次にORP11上のORP9結合部位を明らかにし、Rab9結合部位と分離できるか否かを検討する。さらに、NPC1欠損CHO細胞でのORP11過剰発現の効果をORP9のdominant negative formで阻害できるか否かを検討する。 ORP9以外の候補蛋白質の同定を目的として、ORP11-GST融合蛋白質をプローブとしたORP11/Rab9複合体の精製を試みる。具体的には、ORP11-GSTをグルタチオン・ビーズに固相化したカラムを作製し、HepG2細胞抽出物からORP11/Rab9複合体を回収する。これに含まれる蛋白質を質量分析により同定する。得られた蛋白質おのおのについて、i) それらを6xHis融合蛋白質として作製し、in vitroでの複合体再構成実験を試みるのと並行して、ii) siRNA knockdownがNPC1依存性コレステロール輸送に及ぼす効果を検討する。
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