2018 Fiscal Year Research-status Report
XORのC末端領域は、血管内皮障害をもたらすXORの活性変換のトリガーとなるか
Project/Area Number |
18K15070
|
Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
藤原 めぐみ 日本医科大学, 医学部, 助教 (30648605)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 血管内皮 / XOR / DO変換 / HUVEC / 局在 / HEK293 |
Outline of Annual Research Achievements |
心臓血管系の病態に重要な活性酸素種(ROS)の主要な供給源である血管内皮のXORは一定の環境で活性変換を起こして(DO変換)活性型をとり、H2O2とO2-を産生して組織を障害する。細胞内でのDO変換の機序は不明であるが、本研究では、膜や他のタンパク質と相互作用しやすい構造をもつXORのC末端領域がDO変換の引き金となると仮定し、証明する。 初年度は、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)にGFP fusion-XORを発現させ、DO変換時に細胞内のXORが局在を変化させるか、また、膜との相互作用がC末端領域依存性に起こるかどうかを解析するためにGFP単独またはGFP fusion-XORをHUVECに発現させ、細胞の生存率および形態の変化を観察するとともに、発現効率および細胞内局在を確認した。結果として、GFP単独ではHUVECにおいて50%程度の発現が観察されたものの、GFP fusion-XORでは3%程度と発現効率が大幅に低下し、発現陽性細胞では高率で細胞が萎縮し細胞死が観察された。原因としては分子量の大きなXORの強制発現自体による負荷とXORの産生するH2O2とO2-が影響していると考えられた。より適した実験系を構築するためにHEK293細胞に切り替えて実験を遂行し、GFP fusion-XORの40%程度の発現系を確立し、キサンチンとNAD+を基質とし、生成物である尿酸の産生速度を再現性良く測定できるXORの活性測定系を確立した。現在は、C末端 deletion XORベクターを作製し、HEK293細胞で同様の検討を行うとともに、HUVECでの発現ベクターの再検討を進めている段階である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在HUVEC細胞においては発現が非常に困難で内皮細胞での解析が進行していない状況である。理由として、XORの過剰発現がHUVECにおいては負荷が大きく、発現自体に毒性があり、強制発現系が非常に困難だからである。その対策として、強制発現させる細胞をHEK293に切り替えて遂行するとともに、HUVECでの発現ベクターの改良を進めている。また、血管内皮細胞障害におけるXORの役割を別の角度からとらえるために、後述のような実験系にて内皮XORの阻害による内皮保護効果についての解析も同時に進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述のとおり、引き続きHUVECでの強制発現系を検討する。 また、別の切り口として内皮XORの阻害効果に関して以下の実験系を並行して進行する。血管内皮XORの阻害は、XORによるH2O2およびO2-産生阻害を介する機序とは別に、サルベージ経路を介したATPの再利用を増加させることで血管内皮保護作用を増強する機序が予測されている。本研究では、細胞内ATPを枯渇させる放射線照射をHUVECに対して実施した。その結果、XOR阻害剤の投与により血中に増加するヒポキサンチンの増加は、放射線照射されたHUVECにおけるDNA障害とアポトーシスを有意に抑制し、細胞の生存性を明らかに増加させた。今後は、XOR阻害が実際にサルベージ経路を活性化させることで細胞内ATP濃度を増加させるかを明らかにするために、サルベージ経路に必須の酵素であるHGPRTの遺伝子発現抑制系を用いた解析を進める方針である。
|
Causes of Carryover |
当初の計画では、XORを強制発現させたHUVEC細胞の刺激実験を初年度に行う予定であったが、HUVECにおける発現系が困難であったため、刺激実験自体を2年目以降に行うように変更した。そのため、初年度に購入するはずであった刺激剤の購入を二年目に変更したため、差額が生じた。 使用計画としては、二年目に刺激剤の購入に充てる予定である。
|