2020 Fiscal Year Research-status Report
XORのC末端領域は、血管内皮障害をもたらすXORの活性変換のトリガーとなるか
Project/Area Number |
18K15070
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
藤原 めぐみ 日本医科大学, 医学部, 助教 (30648605)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | XOR / DO変換 / XOR阻害剤 / サルベージ経路 / ATP再合成 / ヒポキサンチン |
Outline of Annual Research Achievements |
キサンチン酸化還元酵素(XOR)は活性変換(D/O変換)を起こして酸化酵素型(XO)をとると、H2O2とO2-を産生して血管内皮障害に寄与し得るが、その機序は細胞および組織レベルでは不明である。本研究では、C末端領域が関与すると思われるD/O変換について、局在変化との関連性およびプリン代謝変化の解析を行った。初年度は、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)にGFP fusion-XORを発現させ、D/O変換時における細胞内XORの局在変化および膜との相互作用について解析のために遺伝子導入による発現を試みたが、細胞イメージングによる発現と局在の確認に至ったものの、XORの発現自体が細胞に致死的に作用して同細胞での発現は確認できなかった。そのため、二年目はXOによる血管内皮障害の機序に着眼し、XOR阻害薬による内皮保護効果について解析した。皮膚の血管内皮障害に対するXOR阻害薬の効果を調査するために、障害範囲を厳密に局限しやすいことから電子線照射を採用した。放射線性皮膚炎モデルマウスへのXOR阻害薬の投薬は血中ヒポキサンチン(Hx)濃度を増加させ、重度皮膚炎を軽減した。この機序を探るため、細胞内アデニンヌクレオチドの分解で生じるHxの再利用(サルベージ経路)の賦活化を想定し、血中プリン代謝物の変化および細胞障害マーカーを測定した。放射線照射後にはDNA修復のために照射2時間後で最もATPが減少するが、Hx存在下ではATP減少率が軽減し、その後のDNA障害およびアポトーシスが有意に抑制され、かつ照射2日後の細胞生存性が増加した。このように、放射線照射時にXOR阻害剤により組織中Hxを高く保つことは、局所でのサルベージ経路を介したATP再合成を増加させ、DNA修復ひいては細胞生存率の増加につながることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で明らかになったXOR阻害剤による血管内皮保護効果の機序については、 ①第92回日本生化学会大会における成果発表 ②特許申請 を既に終えている。 現在は論文投稿準備を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、細胞レベルでのXOR阻害による血管内皮保護効果について検討し、XOR阻害によるHxの局所的な増加がサルベージ経路を介したATPの再利用を増加させることで血管内皮保護作用を増強する機序が明らかとなった。2020年度が最終年度の予定だったが、産後休暇および育児休暇による実験中断のため、2020年度はデータのまとめと論文投稿の準備に留まった。今後は放射線皮膚障害モデルマウスを用いて個体レベルでの効果に関して、より詳細な検討を行うとともに、論文のまとめに必要な補助的なデータの採集を行っていく方針である。
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Causes of Carryover |
産後休暇および育児休暇の取得により、研究を中断しておりました。 そのため、研究期間の延長手続きを行い、復帰後に研究を再開する予定です。
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