2021 Fiscal Year Research-status Report
XORのC末端領域は、血管内皮障害をもたらすXORの活性変換のトリガーとなるか
Project/Area Number |
18K15070
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
藤原 めぐみ 日本医科大学, 医学部, 助教 (30648605)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | XOR / DO変換 / XOR阻害剤 / サルベージ経路 / ATP再合成 / ヒポキサンチン |
Outline of Annual Research Achievements |
キサンチン酸化還元酵素(XOR)は活性変換(D/O変換)を起こして酸化酵素型(XO)をとると、H2O2とO2-を産生して血管内皮障害に寄与し得るが、その機序は不明である。本研究では、C末端領域が関与すると思われるD/O変換について、局在変化との関連性およびプリン代謝変化の解析を行った。 初年度は、HUVECにGFP fusion-XORを発現させ、D/O変換時細胞内XORの局在変化および膜との相互作用解析のため強制発現を試みたが、細胞イメージングによる発現と局在の確認に至ったものの、XORの発現自体が細胞に致死的ダメージを与え供試できなかった。そのため、二年目はXOによる血管内皮障害の機序に着眼し、XOR阻害薬による内皮保護効果について解析した。放射線性皮膚炎モデルマウスへのXOR阻害薬の投薬は血中ヒポキサンチン(Hx)濃度を増加させ、重度皮膚炎を軽減した。この機序を探るため、細胞内アデニンヌクレオチドの分解で生じるHxの再利用(サルベージ経路)の賦活化を想定し、血中プリン代謝物の変化および細胞障害マーカーを測定した。本研究の結果から、Hxは、組織内のHxの増加がサルベージ経路を介してATP合成を増加させ細胞を活性化することが明らかとなった。今回、ATP合成系と利用系のバランスを示すエナジーチャージは、放射線照射後においてHx添加の有無で変化がなかった。Hx添加群では修復が進んでおり、ATP利用系が増加していたと考えられるが、ECは変化しなかったことから、ATP利用の増加にともない生理的な範囲でATP合成系が増加したことが示唆された。さらに、放射線照射後のような急激なエネルギー需要の増加に際して、Hxは細胞内のアデニンヌクレオチド(ATP、ADP、AMP)レベルを上昇させ、より容易にエネルギー需要を満たすことができることが示唆された。これらを総合すると、Hxの蓄積量を増やすことでATPを補充することは、放射線による臓器障害に対処するための有効な戦略であると推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究期間中に育児休業休暇を取得したため、当初の計画よりはやや遅れている。 HUVEC細胞におけるXOR強制発現が困難であったために、実験系を変更して進めることとなった。現在は一連の研究成果について論文に投稿し、採択された。そのため、現在は更なる応用研究を実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究におけるHxによるサルベージ経路賦活化による細胞保護効果の機序について更に詳細に検討するために、放射線障害のみならず、今後は細胞内ATPの減少によって誘発される病態色素網膜変性疾患およびアルツハイマー病といった神経細胞におけるエネルギー不足を主徴とする病態の機序と治療法の確立を目指し、HxおよびXOR阻害剤によるATP賦活化の有効性と作用メカニズムを探求する。サルベージ経路の基質添加実験だけでなく、サルベージ経路に拮抗するDe novo合成経路阻害も併せて検討する。評価系としては、HxおよびDe novo合成経路阻害剤の添加によってどのようにATP合成が賦活化されるのかを可視化するために、安定同位体ラベルを用いた代謝物の定量と代謝経路の同定を行うとともに、代謝物の網羅的解析を実施し、他の代謝系への影響も含めて評価する。また、ATPが増加することで細胞保護効果に繋がる機序を、多量のATPを消費するユビキチンプロテアソーム系の活性評価などで評価する。
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Causes of Carryover |
育児休業期間の取得により、研究計画が遅れたため。 使用計画としては、投稿論文のより詳細な機序解明のためにより詳細な代謝経路の評価を実施する。
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