2019 Fiscal Year Research-status Report
ファブリー病のミスセンス変異と機能的多型の分子病態の解析と診断への応用
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18K15071
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
月村 考宏 明治薬科大学, 薬学部, 助教 (50632783)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ライソゾーム病 / 遺伝子変異 / 臨床表現型 |
Outline of Annual Research Achievements |
ファブリー病は、リソソーム性加水分解酵素であるα-ガラクトシダーゼA(GLA)の活性低下により、基質である糖脂質が全身の細胞に蓄積するX染色体性の遺伝病である。近年、アミノ酸置換を起こすにもかかわらずファブリー病を発症しない機能的多型が見つかっており、臨床では新規アミノ酸置換が見つかった場合、病因変異であるか機能的多型であるかを判断することが困難であるため問題となっている。本研究では特に軽度な臨床症状を引き起こすミスセンス変異3種類(p.R112H, p.N215S, p.M296I)と機能的多型4種類(p.E66Q, p.R118C, p.A143Y, p.D313Y)を蛋白質レベルで比較し、病気と非病気の境界を解明することを目的とした。 COS-7細胞に各変異GLAを一過性過剰発現させ、経時的にGLA活性とGLA蛋白質量を解析した。機能的多型の方がミスセンス変異に比べて共に大きい傾向がみられたが、機能的多型のなかでもp.R118Cとp.A143Tはp.E66Qとp.D313Yに比べて低く、ミスセンス変異に近い値を示すことが確認された。また、N215S変異GLAは分子量が小さかったが、これはN215がN型糖鎖結合部位であるため糖鎖が一本欠損したためと考えられた。 次に、各変異GLA蛋白質を培養液中に分泌するメタノール資化性酵母株を樹立し、その培養液から変異GLA蛋白質を0.5-2mg精製した。N215S変異GLAは、COS-7細胞での発現同様、分子量が小さかったが、糖鎖除去処理することで他と同じ分子量になったため、哺乳類細胞で作製したGLA蛋白質と同様であることが確認され、本研究の目的に適した精製酵素であることが確認された。これらの変異GLAの酵素学的パラメータ(Km、Vmax)は野生型GLAとほとんど同じであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年9月から2019年8月の1年間は海外留学のため、本事業の研究を行うことができず、予定よりも遅れてしまった。そのため、一年間の延長申請を行った。しかし、各変異酵素の性状解析を行うための精製酵素を全て取得できたため、次年度は性状解析を行うことで予定した解析を行うことが可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
精製酵素を用いて、リソソームのpHである酸性条件とその他の細胞小器官のpHである中性条件における熱安定性(残存活性、熱変性温度)の解析を行う。 また、分子モデルソフトTINKERを用いて変異GLA蛋白質の立体構造モデルを構築する。そして、アミノ酸置換により影響を受けたGLA分子内の原子の数とその移動距離を解析する。 以上のin vitroとin silicoによる蛋白質レベルの解析結果と今まで解析してきた患者情報と臨床検体の解析結果を統合することにより、ファブリー病の分子病態の解明を進めるとともに蛋白質レベルで病気と非病気の境界の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
2018年9月から2019年8月の1年間は海外留学のため、本事業の研究を行うことができなかったため、残予算が発生した。本年度が最終年度であったが、1年間延長申請を行った。次年度では、予定していた実験を行うための試薬や消耗品の購入、論文投稿にかかる予算等に使用する予定である。
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