2018 Fiscal Year Research-status Report
有機リン中毒解毒剤PAMを用いた新しい検査反応の発見および様々な用途開発
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18K15072
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
永瀬 澄香 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (00189127)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 解毒剤PAM / 有機リン中毒 / 臨床検査値影響要因 / 新PAMデンプン反応 / 血糖測定 / 教材開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)新PAMデンプン反応の教材開発:研究では、有機リン中毒解毒剤プラリドキシムヨウ化メチル(PAM)を用いた新しいデンプン反応の活用法を検討した。発見した新PAMデンプン反応は従来のヨウ素デンプン反応に比較して、環境にも優しく、簡単にデンプン反応を確認ができる。溶液の糖検出反応やアミラーゼ酵素反応の定性反応にも利用可能であることがわかった。中高生が楽しくできる理科実験の応用として、新PAMでんぷん反応実験を確立させ、教育教材への活用が可能であると考える。 2)PAMの臨床検査値影響要因の検討:また、本研究ではPAMの臨床検査値影響要因を検討している。従来法に加えて、新しい2つの自己血糖測定(SMBG)器について、血糖測定に及ぼす薬剤(PAM、アスコルビン酸)の影響および温度変化による影響を検討した。薬剤と温度変化の影響では濃度や温度を変えて検討し、注意喚起すべき点や啓発すべき重要な所見が得られた。 3)糖質制限食におけるFGMへの変動要因の検討:さらに、近年、新しく販売されたFree Style Libleは、持続血糖測定(Flash Glucose Monitoring:FGM)として、糖尿病患者が2週間連続血糖測定(間質液)することが可能である。今回、糖質制限食事コントロールを行い(N=3)、被検者は、普通食(約1900kcal)と糖質制限食(1500kcal)をそれぞれ3日間同じ食事を摂取し、FGM(Free Style Lible)を用いて食事の影響における血糖値日内変動を調べた。糖質制限食では、普通食に比べて食後の最大血糖値の上昇が抑えられた。特に食材として、キノコ類(舞茸など)は食後の血糖上昇抑制効果が判明した。糖尿病患者の食事療法による血糖コントロールおよび血糖値管理に役立つばかりでなく、一般の方の健康増進を考えるうえで重要な所見であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)有機リン中毒解毒剤PAMを試薬として用い、新しいデンプン反応の活用方法を検討した。初年度は、新PAMデンプン反応の教育への有用性を調べるため、教育教材の開発を目指して研究を行った。 2)臨床検査値影響要因に関して、新しいSMBG器を用いて薬剤の影響(解毒剤PAMとビタミンC)および保存温度変化による血糖値に及ぼす影響を検討した。 3)近年保険適用となった新しい機種で持続血糖測定(FGM)を行い、普通食と糖質制限食による連続血糖値の日内変動を比較検討した。 初年度の研究では、検討項目を決めて計画的に実験を行い、1)から3)の検討が当初の予定通り進んでおり、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに研究において、血糖測定の勧告法であるヘキソキナーゼ(HK)法におけるPAMの影響を明らかにした。今後、有機リン中毒解毒剤PAMの臨床検査値影響要因として、リウマチ因子(RF)測定UV法の影響要因を検討する。酵素比色法の紫外部測定法(340nm)におけるPAMの影響要因は未解決な問題点が残されているため、今後の研究で影響要因と改善点を解明したい。 研究で発見した新PAMデンプン反応は様々な実験に応用が可能であると考えている。 次年度は教育教材への応用として、小学生でも利用しやすいヨードデンプン反応試薬のキット化を検討し、簡単できるデンプンの定性反応理科実験に活用できるように研究を進める。 また、産業界への貢献の可能性を追求するため、新PAMデンプン反応を用いて様々な食品中のデンプン検出反応の利用法を確立するため定性分析試薬調整の検討を行い、その有用性を確認したい。 さらに、初年度の実験で血糖測定における食事の影響を普通食および糖質制限食において検討した。この研究を継続して実施し、特にキノコ類(舞茸)の血糖値を低下させる要因を検討する予定である。舞茸成分の酵素阻害への影響が考えられ、その作用機序を新たに研究することとしたい。舞茸成分の分解酵素の証明には、発見した新PAMデンプン反応試薬を活用できると考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、研究実験費用(新PAMデンプン反応に使用する薬品購入や血糖測定における糖質制限食の影響要因検討として食品食材の購入費)および学会参加費用を次年度に繰り越したためである。 使用計画は、デスクトップパソコン・PCソフトの購入、実験試薬、物品、糖検査のための食材等を購入するために利用する。さらに、国際学会、国内学会の参加を計画しているため、国内外学会参加費、学会旅費および研究成果を学会誌に投稿するための投稿論文費用として使用する計画である。
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