2018 Fiscal Year Research-status Report
肥満誘導性肝がんにおける老化細胞由来のエクソソームの役割の解明
Project/Area Number |
18K15073
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
羅 智文 公益財団法人がん研究会, がん研究所 細胞老化プロジェクト, 研究員 (40816998)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脂肪肝 / 代謝 / 細胞老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、細胞老化を起こした肝星細胞より分泌されるエクソソームが肝実質細胞の代謝を攪乱し腫瘍化を引き起こす分子メカニズムを解明し、新たな肝がんの予防法や治療法の開発に繋げることである。申請者は肥満誘導性肝がんにおいて肝星細胞が分泌するエクソソームによって肝実質細胞が腫瘍化するメカニズムを明らかにするために、まず肥満誘導性肝がんモデルマウスにおける代謝の変化について調べた。その結果、肥満誘導性肝がんモデルマウスの腫瘍部において、糖代謝に関連する遺伝子の発現が著しく低下していることが分かった。更に糖代謝に関連する中間代謝産物の濃度を調べたところ、腫瘍部において多く蓄積されている。これらの結果から肥満誘導性肝がんモデルマウスの腫瘍部において糖代謝関連酵素の遺伝子発現が低下しているにもかかわらず、それらの中間代謝物が蓄積していることが明らかになった。これらの結果から、恐らく腫瘍部に蓄積されている中間代謝物は肝実質細胞以外の細胞から合成されていることが考えられる。また、申請者が脂肪肝に模した培養状況で細胞老化を誘導したヒト肝星細胞株とヒト肝臓がん細胞株を培養した結果、それぞれの細胞における代謝遺伝子の発現パターンが異なることが分かった。更に、脂肪肝を模した条件でヒト肝星細胞株を培養したところ、ヒト肝星細胞株のエクソソームの分泌量が著しく増加することがわかりました。これまでの結果から、肝腫瘍内にこれらの細胞がエクソソームを介して相互作用し、互いの細胞内代謝に影響を与えていることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では肥満誘導性肝がんにおいて肝星細胞が分泌するエクソソームによって肝実質細胞が腫瘍化するメカニズムを明らかにすることである。今年度に申請者は満誘導性肝がんモデルマウスにおける代謝の変化について調べ、腫瘍部における代謝の異常を確認することができた。また、ヒト肝星細胞株とヒト肝臓がん細胞株を用いて脂肪肝を模した条件で培養した結果、それぞれの細胞における代謝遺伝子の発現パターンをしていることが確認できた。これらの結果は今後の更なる生化学的な解析や、分子メカニズムの解明に非常に重要である。また、これまでの結果から、肝腫瘍内にこれらの細胞が相互作用し、互いの細胞内代謝に影響を与えていることが示唆される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果から、申請者は肥満誘導性肝がんモデルマウスにおける代謝の変化を見つけた。更に、申請者は細胞株を用いた実験から肝星細胞と肝実質細胞が異なる代謝パターンを示していることを確認した。これまでの結果から、肝腫瘍内にこれらの細胞が相互作用し、互いの細胞内代謝に影響を与えていることが示唆される。今後、申請者は肥満誘導性肝がんモデルマウスから肝星細胞と肝実質細胞を単離し、それぞれの細胞の代謝産物を測定し、細胞内の代謝状況を調べる。また、これらの細胞からエクソソームを回収し、エクソソームに含まれる蛋白質の質量分析やメタボロミクス解析からエクソソームを介して細胞の代謝を攪乱する可能性について検討し、代謝異常を引き起こす原因因子を同定する。最後に、同定した原因因子を制御することで、肝がんの発症を予防もしくは治療できるかどうかを明らかにするために、原因因子を標的とした活性阻害剤のスクリーニングを行い、肝がんの発症への影響を検討し、治療法の開発へと繋げる。
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